近世から現代までの朝鮮半島状況をおさらいしてアジア国際情勢の今後を展望いたします(北朝鮮の話)(2019/12/13)

おはようございます。

2019年12月のアジア国際政治状況について、朝鮮半島の北半分(いわゆる北朝鮮)を中心に、背景や経緯、歴史を掻い摘みながら基本的な理解をおさらいしておこうという記事です。

20世紀初頭まで一旦遡ります。

1904年に始まった日露戦争は、アジアの安全保障を一変させました。

国費の数倍の戦費を費やした大日本帝国(これが正式名称なのでこう記載します)は、極東でひたすら南下政策を取ってきたロシア帝国を満洲の荒野に押し返し、朝鮮半島への影響力、勢力圏を確保しました。

そうして1910年、日韓併合となります。

欧州列強の「植民地」ではなく、相手国領土の切り取りでもなく、国丸ごとの併合を行うという、大きな変換、転換だったわけですが、これは、その前年の、1909年(明治42年)10月26日に、ロシア帝国のハルビン駅頭で、国際協調派の重鎮であり、朝鮮半島政策においても実質的に抑え役となっていた、日本の枢密院議長伊藤博文が朝鮮民族主義者の安重根に暗殺されるというショッキングな事件が起こり、かえって韓国の併合は決定的になったという面があります。

そうして、1945年(昭和20年)8月15日、大日本帝国は第二次世界大戦(通称、太平洋戦争/正式名称は大東亜戦争)における連合国に対する敗戦に伴って実効支配を喪失し、同年9月2日、ポツダム宣言の条項を誠実に履行することを約束した降伏文書調印によって、正式に大日本帝国による朝鮮半島の領有は終了しました。

正式な国同士の条約によって実効支配をした期間は、実に35年となりますが、この35年、「歴史の評価」が定まるにはまだ時間がかかるでしょうが、日本は朝鮮半島に多大の公共投資や制度の導入を行い、植民地経営をはるかに上回る投資を行ったというのもまた事実です。

同じく、実効支配を50年続けた台湾と共に、実効支配を失ったこれらの極東アジア地域は、それぞれにそこからまた数奇な歴史を辿ることとなります。

ちなみに、世界でのもっとも親日的な「国」の一つ、それが台湾なのですが、台湾では、たくさんの日本語由来の言葉が残っていて、例えば台湾で「トーサン」というのは家族の家長であった父さんのことであり、「多桑」と書きますが、台湾語読みで「トーサン」、日本統治時代の「父さん」の名残である。

で、1994年に作られた映画「多桑」(トーサン)は、「金馬奨(台湾のアカデミー賞)」の観客投票最優秀作品賞を受けたというくらいの親日度です。

翻って、朝鮮半島の2国が日本に向ける「敵視」。

この二つの旧日本国を比べて、なんという違いなのでしょうか驚きます。

さて、もちろん、敗戦国として長い(連合国という名の国際連合機関、なかんずくその中の中心である安全保障理事会常任理事国5国による世界の運営)雌伏の時を過ごすことになる、わが日本も例外ではないですが、それよりも、この朝鮮半島については、その直後起こった朝鮮戦争により、ソ連に支援された(というか同一視された)北朝鮮の金日成王朝と、アメリカの支援を受けた南朝鮮(大韓民国)とが争う、南北分断の時代となります。

ちなみに、日本はソ連軍が、「樺太と北方四島」までしか侵攻してこなかったので、日本の南北分断はかろうじて回避されました、というのが「正しい」歴史の理解というものでしょう。

ですので、樺太と、千島列島については、もう一度国際政治のやり残しの部分として、平和条約をかの国と締結した暁には、最低でも北方四島の回復くらいは成し遂げないと困ります、というのが今の日本政府の正式な立場ということになります。

そもそも、日本と旧ソ連とは、「戦争」などしていないのですから。

時間が経てば実効支配で風化する、というのはかの国の常套手段ですが、クリミア半島を併合したように、この21世紀になってもなおこのような手段がまかり通るのが国際政治の実際であるということはよくよくわかっておいた方が良いと思います。

さて、朝鮮半島に戻りますが、その北朝鮮の共産主義革命家であった、金日成(キムイルソン)は、当初モスクワの共産党支持を受けていましたが、ソ連におけるスターリン後の個人崇拝思想の敗北、そして台頭する中国共産党の毛沢東主義(個人崇拝)の波の中、なんとソ連とも中国とも一定の距離を置き、自らの世襲制を軸にした共産主義国家「王朝」を作り上げるという国際政治上の離れ業を演じるのです。

その中で、彼ら金王朝3代(初代:金日成、2代目:金正日(キムジョンイル)、3代目:金正恩(キムジョンウン))が連綿として続けている唯一無二の政策が、武力拡張独自路線による、核兵器の保有です。

この、国際政治に全く背を向けて、とにかく軍拡にひた走る最貧国国家、これが北朝鮮(国交がないので、「朝鮮社会主義人民共和国」という彼らの呼称はあえて用いません)の正体ということになります。

こうして、国際社会の監視も経済制裁もひたすら無視し続け、そうして核兵器を開発し、次に、その核弾頭をきっちり太平洋を超えてアメリカ本土に命中させる大陸間弾道ミサイルの開発に血道を上げています。

北朝鮮の国家としての唯一の「目的」は、この金王朝体制維持、これに尽きるわけですが、国内からの革命勢力や反対勢力は、ほぼ幼少教育時点から根絶やしにされており、首都平壌(ピョンヤン)に住めるのは金体制に忠誠を誓う「核心」階級のみで、その下の知識人などの「動揺」階級や、金王朝に対して少しでも反感や違和感を持つ「敵対」階級の人々はそもそも首都平壌には住めません。

そうして、海外からの観光客による外貨獲得にも熱心なのですが、「ガイド」という名の監視員がつき、行く場所も細かく指定されます。

そうして、海外の目には触れない、田舎の農村部については、党と国家指導者と軍による、厳しい情報管制が敷かれており、しかも、配給制経済で非常に飢えている、そういう状況になっているわけです。

ここまで、王朝という体制維持を自己目的とした「国家」というのが21世紀の、この国際協調の時代にいまだ残っているというのが、非常に違和感がありますが、この国を、内部の革命から変わることを期待するのは、相当難しいと思われます。

難しいどころか、むしろかの国は南朝鮮(正式国名は大韓民国)の民心を掌握しつつあり、現在の指導者である3代目の金正恩に至っては「怖い人だと思ったけど意外に優しい同胞」といった(誤った)イメージすら、南朝鮮では漂っている、そういった状況になって来ているのです。

大韓民国としては、半島統一は悲願でありまして、もちろん、それは、いわゆる「まともな」形での統一、北朝鮮人民の解放を前提に行われるべきであるのですが、どうも、このまま行きますと、北の金王朝が南進してそのまま大韓民国を飲み込む形での「金王朝による統一」すら図られそうな、そんな気配です。

北朝鮮の金正恩政権は、歴史や国際情勢をことのほかよく勉強、分析していて、自らの体制維持(保身)のためにはあらゆる手段をかけてきます。

その意味では大変手強いです。

こうした、あらゆる手段と暴力を併せ持つ魑魅魍魎の相手に対して、日本の「明治維新初期」でなんでも無限に仕事やタスクが待ち構えていてとにかく有為な人材であれば、官吏にでも教師にでも、軍人にでも政治家にでもなりえた、そういった特殊な国家成長段階や条件だけで通用した、「同学年競争」「画一試験」の「偏差値教育主義」による「新卒一括採用」「年功序列」「メンバーシップ型の終身雇用制度」をいまだ標榜、維持している我が国日本において、こうしたきちんとした国際政治の構想を持って諸外国と渡り合える、そのような政治家や外交官を求めるのは酷な話だと思っています。

これを少しでも変えるためには、欧米やアジア先進国では普通になっている、教育の個別化、および「通年」の「中途採用」、実力主義の「年俸制」、「ジョブ型」雇用の条件で、すぐ会社経営側と同じ方向を向けるストックオプション制度の普及などが必要です。

すでに、先に述べた日本型の教育・雇用システムにおいて追求される、潜在能力の確からしさの代替シグナルに過ぎない、偏差値により輪切りされた大学序列や、ブランド学歴はますます通用されなくなると断言しておきます。

大体、18歳か19歳かそこらで、単なる試験突破技術にしか過ぎない、ブランド学歴取るために血道を上げて、あとは流しの人生というのは、それはあまりに長い人生の終わりだと思います。

そういうわけで、北朝鮮情勢から日本の教育制度にまで流れてしまいましたが、こちらからの本日の呟きは以上です。

(2019年12月13日 金曜日)

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