痛ましい事件を受けてそれでも障害者施設の方々に対し謹んで文を捧ぐ(2016/08/05)

おはようございます。

2016年8月の痛ましい事件を受けての記事です。

今日の記事は自身の主張が色濃く入り若干筆が長くなりますのでご承知おきください。

神奈川県相模原市の障害者生活支援施設において、非常に痛ましい出来事が起こりました。

19人刺殺という、戦後最大の大量殺人事件です。

戦前まで遡りますと、横溝正史の長編推理小説「金田一耕助シリーズ」の岡山三部作と呼ばれる集大成となった作品の舞台となった八つ墓村のモチーフにもなった津山30人殺しなどと呼ばれるショッキングな事件もありますが、今回のものは、死傷者合わせて40人超、文字通り前代未聞の事件です。

犯人に対しては一片の同情もなく、厳罰極刑を望みますが、それは捜査機関と司法が今後明らかにしていくこととして、ここでは、犯人(容疑者)の漏れ伝わってくる「思想」については徹底的に完膚なきまでに論破し、これをもって被害者とご遺族へのささやかな追悼の代わりとさせていただきます。

報道などによると、この容疑者は、「弱者は役に立たないので死すべし」という思想を衆議院議長に手紙でしたためたそうで、「障害者は不幸を作ることしかできない」と断言しているようです。

それは違うということをこれから証明します

しかし、人間を含む自然界において、強いものが食えるというのは間違いです。

弱ければ喰われるわけではないし、強くても滅びる種はたくさんいます。

たとえば、個体レベルで虎やライオンは猫や兎より強いですが、猫や兎は世界中で繁栄しており、虎やライオンは絶滅の危機に瀕しています。

猫が人間界の愛玩ブーム(いわゆる猫ブーム)によって「弱者として」繁栄しているので
あれば、それは弱者が食える、生き延びることができるという何よりの証左です。

自然界では、生存競争といえば種レベルでの「適者生存」のための取り組みのことを指します。

種を構成する個体のレベルでは、全ての個は必ず死にます。

すべての個体は、必ず喰われるか病気か寿命か何かでとにかく死にます。

従いまして、個体間の寿命の瑣末な違いは、自然界において生き残ろうとする種レベルで見ればあまり意味のない議論です。

もちろん個々の人生が大切なことはわかっていますが、種レベルに引きなおすとそうなります。

そして、種レベルでの生存ルールは、「適者生存」です。

決して弱肉強食ではありません。

強い者が残るのではない、適した者が残るというのがポイントです。

そして、残るとは、個体レベルで助かるとか生き残るとか永遠の命とかいうことではなく、種レベルで遺伝子が次の世代に受け継がれ、外見内面は大いに変化しようと、遺伝子の保存がなされるということです。

そして、この厳しい自然界においては、無限の環境適応のやり方があるということなのです。

必ずしも活発でイケてるリア充が残る(勝つ)とは限らず、深海生物やナマケモノといった、極端に活性を落とし活動量と代謝を落として生き延びる生存戦略が立派にあります。

オタクで何が悪い、ということです。

大きいもの、小さいもの、速いもの、遅いもの、多くの子を生むもの、少なく産んで育てるもの、卵で子孫を残すもの、胎盤を持つもの、分裂するもの…。

目の見えるもの、嗅覚が発達したもの、触覚が発達したもの…。

それゆえ世界は驚異に満ちた多様性にあふれているのです。

人間という一つの種にすぎないさらにその個別の個体ごときが少々集まって、何らかの形質を障害だとカテゴライズするのはまるで無意味です。

そういったものは価値的に上下があるものではなく、全て単なる特徴に過ぎないのです。

あらゆる形態の生物が存在することは御存じの通りで、「適応」してさえいれば、強かろうが弱かろうが何も関係ないというシンプルな世界です。

シンプルなゆえ無限の多様性を孕む。

それが我々の生きている世界というやつです。

さて、そんな多種多様の生物の中で、ひときわ特異な人間という種のカテゴリについて考えを進めていきます。

「生存」とは「子孫を残すこと」であり「適応」の仕方が無数に可能性のあるものである以上、どのように「適応」するかはその生物の生存戦略次第ということになります。

そして、人間の生存戦略は、「社会性」「コミュニケーション」です。

高度に共同し協働することで、機能的な社会を作り、その互助作用でもって個体を保護するという戦略です。

昔やっていた狩猟ですら、協働して行いました。

農耕や牧畜に至れば、協働しているのは自明でしょう。

通貨という人間の最大の発明も、社会性とコミュ二ケーションと信頼が高度に高まった結果作り上げられたシステムで、人間のこの特性なくしては誰もただの印字した紙に価値など見出さないでしょう。

そして、個別的には長期の生存が不可能な個体(容疑者が憎んでやまない主体であるところの「弱者」「障害者」といった弱者)もできるだけ生き延びさせることで、子孫の繁栄の可能性を最大化しているという立派かつ高度な戦略なのです。

でなければ、生まれてからほぼ数年間、保護者の養育なくしては絶対に生存できない赤子の状態を過ごすという特異な戦略を取ることはできないわけです。

刺殺した容疑者も、生まれてから数年は絶対に一人では生育できなかった個体であるはずで、その際に「弱者は死ね」という思想の者に殺されたかったかということなのです。

立場変われば思想を翻す、というのはいけません。

そして、どれだけの個体が生き延びられるか、どの程度の「弱者」を生かすことが出来るかは、その社会の持つ文字通りの力に比例していきます。

つまり、弱者をより生かすことのできる社会を築いたか、というのは人間の社会性特化という生存戦略のバロメーター(はかり)であり、本来弱者が周りに多くいる社会というのは戦略に沿った誇るべき成果ということなのです。

戦前ならセーフティーネットが少なく、そのような弱者は生存できなかった。

しかし今は施設や制度も(不十分ながら)できていて、生存することができる。

これは人間社会の進歩です。

明らかに進歩しているわけです。

昔は産休すらほぼなく、育児休暇などなかった。

今は(少なくとも制度上は)産休があり、育児休暇の取得率も少しずつ上がっている。

人類は文明を発展させ、前時代では生かすことが出来なかった個体も生かすことができるようになりました。

生物の生存戦略としては大成功なのです。

そして、生かすことができなかった個体というのが、回り回って人間という種の生存戦略に大きなプラスになることもあるかもしれないのです。

どの時代にも通用する「優秀な遺伝子」なるものはありません。

あるのは「ある特定の環境において、有効であるかもしれない遺伝子」であります。

太陽が無くなってしまった時代(なくならないまでも、太陽の活動がほんの少しだけ減退すれば、恐ろしい暗闇と寒さが地球を襲います)、生まれつき目が見えないという形質が、何らかの状況で有位な形質を生み出すのかもしれないのです。

世界じゅうが火山活動で爆裂するような時代になれば、耳が聞こえないというのは立派な静謐なる生存特性となります。

ですから、個体レベルでの特徴を多く残していくというのが正しい戦略なのです。

実は、社会的に生きていく以上に必要な富は必要ない、ということにもなります。

ですから、本源的に生物としてわかっている我々は、巨額の富を得たときにそれを惜しげもなく寄付したりという「不合理な」行動を取ることもあります。

遺伝子によって発現される「形質」が、どういう環境で生存に有利に働くかは人間には計算不可能です。

そして、今時点の社会の人類にとって「障害」としかみなされない形質も、将来は「有効な形質」になってるかもしれません。

でありますから、可能な限り多くのパターンの「障害(=つまるところ形質的イレギュラーですが)」を抱えておく方が、生存戦略上の「保険」となるのです。

障害ではなく特徴であり人類生存のための保険である

障害ではなく特徴。

特徴でもなく保険。

それが、人類の20万年に及ぶ生存戦略です。

人間が、生まれて数年間、無力な状態に置かれるということは、人間というものは全員「社会」というものが無い生の自然状態に置かれると生きていけない「弱者」であるとも言えます。

その「弱者」である人間たちがより集まって社会を形成し、そして出来るだけ多くの自らを含む「弱者」を生かしやすいようにしたのが人間の生存戦略ということです。

だから社会科学を学んでいる人、これから学ぶ人には、国際政治でも憲法でも地方自治でも何でも良いですが次のことを覚えておいて下さい。

もちろん「闘争」や「競争」や「リア充」も人間社会の重要な構成要素であるけれども、より「人間社会」の本質が何かと捉えれば、「協働」「協力」「社会性」である、ということなのです。

「闘争」がどれほど活発化しようが、最後は「協働」しないと人間は生き延びられないからです。

戦争を始めたら、最後講和して終わらせなければ人間は生き延びられないのです。

けんかして、仲直り。

これで一セットです。

結論として、我々全員が「弱者」であり、「弱者」を生かすのが人類の最強の生存戦略だということです。

以上、障害はただの特徴特質に過ぎない、と繰り返しまして本日の話を終わります。

寄付するくらい稼ぎたいのですが、その前にとりあえずおごってほしいリア充が羨ましい筆者からは以上です。

(平成28年8月5日 金曜日)

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