国勢調査2020による衆議院選挙区の区割り見直し

選挙区区割りの主役は鳥取県

久しぶりに、マジで秀逸な記事(筆者調べ)を書きましたので読んでください。

衆議院議員の小選挙区は、2倍の格差を生じさせないよう、定数2の鳥取県人口55万人を超えないようにギリギリに調整されるのです。

2020年に行われた、5年に一度の国勢調査の結果が確定したことを受けて、衆議院議員選挙の小選挙区の区割りが確定しました。

総務省が2021年11月30日、国勢調査の確定値を公表し、これによって、各都道府県に割りふられる小選挙区の数が確定したのです。

東京都で、小選挙区が25から30に、実に5も増えるなど、5都府県で合わせて10の選挙区が増加する一方、10県で1ずつ減少する、いわゆる「10増10減」案です。

衆議院議員の定数自体は、小選挙区289、比例区176の、合計465のままです(議員定数削減のお題目はどこに消えたのでしょう?)。

さて、衆議院選挙の各都道府県に割りふられる定数289の小選挙区の数は、去年の国勢調査の結果をもとに、現在の計算方法よりも人口に比例した配分となる「アダムズ方式」と呼ばれる方法で見直されることになりました。

具体的には、小選挙区の数が増加するのは5つの都と県で、東京で5つ増え、現在の25から30になるほか、神奈川で2つ、埼玉・千葉・愛知で1つずつ増えます。

一方、小選挙区の数が減るのは、宮城・福島・新潟・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・愛媛・長崎の10県で、それぞれ1つ減ります。

これによって、いわゆる「1票の格差」は、いずれも2倍を切ることとなります。

また、衆議院選挙の比例代表の定数176を全国の11ブロックに割りふった結果、東京ブロックで2、南関東ブロックで1増える一方、東北・北陸信越・中国の3つのブロックでは、1つずつ減ります。

小選挙区の具体的な区割りについては、政府の審議会が見直し作業を進め、来年6月までに勧告することになっていて、これを受けて法律が改正・施行されたあとの衆議院選挙から新たな区割りが適用されることになります。

「10増10減」によって、小選挙区は、
▽東京が5つ増えて、25から30に、
▽神奈川は2つ増えて、18から20に、
▽埼玉と愛知は1つ増えて、それぞれ15から16に、
▽千葉が1つ増えて、13から14になります。

一方、10の県では、いずれも1つずつ減り、
▽広島が7から6に、
▽宮城と新潟が6から5に、
▽福島と岡山が5から4に、
▽滋賀、山口、愛媛、長崎がそれぞれ4から3に、
▽和歌山が3から2となります。

比例代表では、
▽東京ブロックが2増えて19に、南関東ブロックが1増えて23になる一方、
▽東北ブロックが1減って12に、北陸信越ブロックと中国ブロックもそれぞれ1減って10となります。

小選挙区の数が1つ減る10の県のうち滋賀、岡山、山口、愛媛の4県では、先の衆議院選挙で、自民党がすべての小選挙区で議席を独占していて、次の選挙までに小選挙区の数が削減された場合、現職議員どうしが公認を争う形となり、調整が難航することも予想されます。

一方、宮城や福島、新潟では、立憲民主党や無所属の議員が複数の小選挙区で議席を獲得していて、区割りが変更になった場合には、調整が必要になるものとみられます。

「10増10減」が確定したことを受けて、今後、具体的な区割りについての議論が加速することになります。

このように、統計法上に定める国勢調査による選挙区割りの見直しは、悲喜こもごもです。

大きくは、人口動態に即した都市部で議席増、地方は軒並み減を後追いして、日本で一番田舎の鳥取県の選挙民の選挙権が、都会の最も過密な選挙民の投票権の2倍にならないように、涙ぐましい努力が続くというわけです。

それでも、東京都の衆議院選挙区は25→30になりますから、非常に恐ろしい現象です。

小池百合子都知事の選挙区に、実に30人もの小選挙区選出の衆議院議員がいるという図が、健全なのかどうなのか、東京30区がいったい東京都の地域のどこを指すのか、さすがの日本地図マニアの筆者でもわかりません。

恐ろしい現象です。

逆に、この選挙区区割りの影の主役というか真の主役である、人口55万人の鳥取県から見てみましょう。

全国で最も人口の少ない鳥取県の衆議院選挙区定数は、2です。

1にしてしまえばいいじゃないか、と筆者のような世間に忖度しないADHDな者は思うのですが、そうすると、1つの区の人口が55万人いて良い、という鬼の議論となり、日本の人口1.258億人で割ると、なんと小選挙区の選挙区は229で良い(現在は289、しかも一票の格差はほとんどない)!ということになってしまうので、そのパンドラの箱を開ける勇気は誰もないので、そのまま人口最小の鳥取県の衆議院選挙区を2のままに維持すること、が隠れた大人の事情になっています。

鳥取県第1区で長く小選挙区で選出されているのは、石破茂さんなのですが、歯切れの良いことをいうことも多い、この方がこの衆議院議員選挙区の区割りについて何か積極的に発信したことを、筆者は寡聞にして聞かないので、おそらく、彼も他のイシューでは歯切れのいいことを言っているようで、その実ポジショントークでパンドラの箱を開けることはやりたくないのでしょう。

議員定数削減と、一票の格差を是正する究極の案、これが、鳥取県の定数を2から1にすることなのです。

鳥取県民および鳥取県に関係する皆さん、ぜひこのことを世の中に広く広めてください。

自分のところだけが削減されるのが嫌ならば、日本全国を巻き込み、壮大な一票の格差是正と議員定数削減という、国家目標を勝ち取ろうではありませんか。

たまには、地方から東京に対して、東京の現状を後追いするのではない前向きな政策提言がなされることを切に願っております。

ま、現実はそのようにはいかない、我々は太古の昔から和を以て貴しとなすでやってきた忖度と自己犠牲と同調圧力にまみれた国民ですので、鳥取県の人口をできるだけ半分に割り2つの選挙区を確保し、そして一番少ない鳥取県第1区を基準に、その選挙区の人口との一票の格差が2倍未満となるようにほかの、東京や大阪といった大都市も含めた他の288の選挙区の人口を押し込めていくことになるわけです。

これは、言い換えると、鳥取県全体より少しだけ人口が少ない衆議院小選挙区を東京といった大都市にたくさんたくさん作っていく、という作業になるのです。

ですので、各選挙区を増やすのが嫌なら、全都道府県の中で人口ワースト1位の鳥取県の人口を爆増させるのが一番手っ取り早いことになるのですが、そうした観点から鳥取県人口を増やそう、少子化ストップ!とならないのも、この国の面白い様式美であります。

おそらく、このような策でごまかすのは時間の問題でしょう。

鳥取県の人口が、今後5年で、数万人でも増えてくれれば、御の字なのですが。

ちなみに、筆者および当社は、憲法改正を通じて、参議院は一票の格差とかを度外視した地域代表にして、衆議院は厳密に人口配分議席にすべきという説を持っています。

たとえばアメリカで最も人口の少ないワイオミング州については、人口割で割り振られる連邦下院議員はたった1名なのですが、こんな小さな州でも立派な州(日本語的な州という意味では伝わりにくいですが、アメリカ合衆国のそれぞれの州は、日本人的感覚で言ったら国と同視されるような権限と力を持っています)ですので、もちろん上院議員は2名です。

このような考え方で、日本の衆議院と参議院を整理するための憲法改正が必要と考えています。

鳥取県は参議院は島根県との合区で0.5人、東京に12名の参議院議員が居るのは過剰だと思います。

まとめますと、鳥取県の人口を上限として衆議院議員小選挙区が決まるという話でした。

逆に、鳥取県の人口を、例えば20万人などに激減させてみると、これ以上議員定員を増やせない圧力が働き、面白いことになるのかもしれません。

以上

「一票の格差」と「地域代表制度」のバランスについて憲法学の観点から論じます

おはようございます。 2016年10月の日本の憲法秩序と選挙制度に関する配信記事です。 日本全国、地域の声を広く募らなければならないという流れを強化する方向で働くのが…