日本の国立大学の再編(2021年12月時点)

指定国立大学法人

まず、昔は単に国立大学といって、国が直接作って運営していたいわゆる国立大学ですが、これを、独立採算にして法人格を付与した形で国立大学法人に再編したあと、ついで2016年の第190回国会で、国立大学法人法が改正され、指定国立大学法人制度が制定されました。

要するに、「指定」がついた国立大学が日本の中ではいわゆる名門(一軍)としてお墨付きを得たというわけですが、世界ランキング的には東大ですら50番以内に入るのがやっとという状況ではそんなのどうやねん?という気もいたしますが、そういうことです。

ちなみに、「指定」を受ける国立大学法人は国立大学法人法の本文には盛り込まれず、文部科学大臣が指定する制度となっていますが、この辺も、運用の柔軟さというより姑息な大学ムラ社会の縮図を感じざるを得ません。

また、「指定」されるために必要な申請要件は、「研究力」に関する2つの国内ランキング、「社会との連携」に関する3つの国内ランキング、「国際協働」に関する3つの国内ランキングが提示され、それら3つの領域において各々1つ以上が国内10位以内に位置している国立大学法人ということですが、まあ建前に過ぎません。

結果、紆余曲折ありまして、直近最後には2021年11月22日に九州大学が追加指定されましたが、旧帝国大学の内北海道大学のみが指定国立大学法人に認定されず取り残された状態です。

指定国立大学法人の申請状況と指定

申請した法人 本部所在地 指定年月日
国立大学法人東北大学 宮城県仙台市(北緯38度15分15秒 東経140度52分25秒) 2017年6月30日
国立大学法人東京大学 東京都文京区(北緯35度42分48.4秒 東経139度45分44.1秒) 2017年6月30日
国立大学法人京都大学 京都府京都市(北緯35度1分34.1秒 東経135度46分50.9秒) 2017年6月30日
国立大学法人東京工業大学 東京都目黒区(北緯35度36分21.4秒 東経139度41分0.8秒) 2018年3月20日
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 愛知県名古屋市(北緯35度9分12秒 東経136度58分4.7秒) 2018年3月20日
国立大学法人大阪大学 大阪府吹田市(北緯34度49分7秒 東経135度31分26秒) 2018年10月23日
国立大学法人一橋大学 東京都国立市(北緯35度41分37.46秒 東経139度26分42.32秒) 2019年9月5日
国立大学法人東京医科歯科大学 東京都文京区(北緯35度42分5秒 東経139度45分55秒) 2020年10月15日
国立大学法人筑波大学 茨城県つくば市(北緯36度6分41秒 東経140度6分41秒) 2020年10月15日
国立大学法人九州大学 福岡県福岡市西区(北緯33度35分49秒 東経130度13分25秒) 2021年11月22日

法人統合

この中で、一つだけ、東海国立大学機構(名古屋大学)という当初は国立大学法人法の制度上、1つの国立大学しか運営できなかった国立大学法人が、複数の国立大学を運営できるいわゆる持株会社のような存在になった形があります。つまり、1対nの構図です。

このように、2019年5月17日の通常国会で国立大学法人法の一部改正を規定した「学校教育法等の一部を改正する法律(令和元年5月24日法律第11号)」(文部科学省)の成立に伴い、下記の通り国立大学法人の統合が協議されています。

今後は、一機構の下の複数の(国立)大学という形が常態化することが期待されます。

つまり、一つの「帝都国立大学機構」の下に、東京大学と京都大学が並立することすら考えられるのです。

京都から見れば、東京のほうが格下の都であり、東京から見れば、帝都といえば東京に決まっている、カビが生えた平安京はすっこんどれ、ということになろうかと思いますが。

2018年12月25日、名古屋大学と岐阜大学の国立2大学法人は、両法人を統合することについて、合意書を締結、2020年度にも「国立大学法人東海国立大学機構」を新設し、傘下に両大学が入ることで、経営の効率化と研究・教育分野の強化を目指すことが発表されています。

すなわち、2020年4月1日、名古屋大学と岐阜大学の国立2大学法人を統合することを規定した「学校教育法等の一部を改正する法律(令和元年5月24日法律第11号)」が施行され、「国立大学法人東海国立大学機構」が設置されたのです。

また、2018年5月29日、小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学の国立3大学法人は、2022年4月に「国立大学法人北海道連合大学機構(仮称)」を新設し統合することについて、基本合意書を締結しました。

その後、2020年3月4日に3大学が法人統合に関してまとめた中間報告により、新法人名を「国立大学法人北海道国立大学機構」とし、その本部を3大学の中間点にある帯広市内に置くことが決まりました。この統合のための法案は、これまた統合される、奈良教育大学と奈良女子大学の統合と合わせ、2021年3月2日に「国立大学法人法の一部を改正する法律案」として閣議決定。この法案は2021年4月22日に衆議院で、5月14日に参議院で可決され、5月21日に法律第41号として公布された。施行は2022年4月1日です。

加えて、2018年7月27日、奈良教育大学と奈良女子大学の国立2大学法人は、2021年度に「国立大学法人奈良(仮称)」を新設し、統合することについて、合意書を締結。また、2021年3月2日に「国立大学法人法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、両大学を置く統合新法人を「国立大学法人奈良国立大学機構」とすることが決定。法案の審議経緯、公布施行は上記、小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学の法人統合と同じです。

さらに、2019年3月29日、静岡大学と浜松医科大学の国立2大学法人は、2022年度に「国立大学法人静岡国立大学機構(仮称)」を新設すること、並びに新法人の傘下となる両大学を静岡地区大学、浜松地区大学の2大学に再編することについて、合意書を締結。

しかしながら、両大学の統合再編には、強い反対の動きもあります。統合再編が他の前例の統合事例とは異なり、法人統合のみならず大学(特に静岡大学の2分割)を伴い、地元(静岡市)の理解を得られる前に推進しているのです。

まるで、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3つの銀行を、分割再編し、みずほコーポレート銀行とみずほ銀行という2つの銀行に組み替えるという(その途上で破壊的なシステムトラブルを惹起した)あのみずほ大統合(2002年4月)を彷彿とさせます。

特に、静岡大学においても法人の統合自体には反対の動きはないものの、静岡地区の教員・学生を中心に強い反対運動が起きています。

両大学の法人統合は、具体的には、(1) 浜松市にある静岡大学浜松キャンパス(工学部、情報学部)と浜松医科大学を浜松地区大学、(2) 静岡市にある静岡大学静岡キャンパス(人文社会科学部、教育学部、農学部、理学部)を静岡地区大学、と名称することです。

しかしながら、この大学機構(アンブレラ方式)発足については大学内部からの教職員の反対署名・請願が多数出されたほか、2019年8月に学生から合意の説明を求める1000名を超える署名が出された。また、2019年8月には静岡市議会が超党派で反対を文部科学省に申し入れるなど、反対の動きが活発化しており、今後、波乱が予想されるとの指摘もあります。

浜松と静岡、この静岡県の両市の主導権争いは激化する一方です。

反対の動きは、静岡大学の静岡キャンパスを中心としたものだが、同大の浜松キャンパスでは、新大学の大学名称をめぐって、対立がある。大学名として有力とされる「浜松医工学科大学」が採用された場合、静岡大学情報学部は、情報学部の存在感が薄れてしまうことを懸念し、「もし決定されるようなことがあれば、大学統合への参加を見直すことも辞さない覚悟」として、2019年7月に情報学部情報社会学科が反対決議を出したほか、情報学部の学生有志も438名の反対署名を同大学長に提出しました。

さらに、2019年9月30日の静岡市議会本会議では、両大学の法人統合・再編について、静岡市の田辺信宏市長が、「大学の統合再編については、地元自治体の十分な理解を得て進めることが最も重要」という文部科学省の通知(2019年7月12日)を根拠として、「静大の取り組みは不十分な状況にあるといわざるを得ない」と答弁し、大学の説明不足を批判した。

田辺市長は、同答弁で、静岡大の石井潔学長から、「(市に)ゼロベースでの議論をお願いしたいと申し出があった」とも明らかにした。

どうも、静岡市と浜松市の対立を煽ってなぞるような記事になってしまいましたが、日本の国立大学は、少子高齢化の影で大きな曲がり角を迎えているということです。

追伸

文部科学省は24日、北海道の小樽商科大(小樽市)、北見工業大(北見市)、帯広畜産大(帯広市)の国立3大学が経営統合して来年4月に設立される「北海道国立大学機構」の初代理事長に、前慶応義塾長の長谷山彰氏(69)を指名した。

任期は2022年4月から4年間。

以上