キャプテン翼の凄さ
Dr.マシリトは嫌いな編集担当から生まれた
「キャプテン翼」はなぜここまで世界的な人気コンテンツになったのでしょうか?これは鳥山明先生をして、Dr.スランプやドラゴンボールを育てたことで有名な編集者マシリトさん(鳥嶋さんの逆さ読み)の言っていた分析です。鳥嶋さんて元々は文芸関係の方に進みたくて、漫画はほとんど読んだことがなかったそうです。で、遊び人でもあったので、泥臭いスポーツ漫画とか根性論とかが大嫌いだったんですって。でもジャンプという少年漫画雑誌の編集部に配属になってしまったので、編集をやるにあたり他誌を含めたヒット作をひたすら読んで自分の中でその”面白い”には何が必要かの理論を構築し直したとのこと。で、そんな過程で読んだ「キャプテン翼」は、最初は何が面白いのか全く分からなかったそうですが、何度も読み込むうちにそれまでのスポーツ漫画とかサッカー漫画と違って目線が全部ボールに向いていることに気付いたんだそうです。それまでのスポーツ漫画って、(普通は全部そうですが)登場人物にカメラは向くんです。けど、キャプテン翼はいつもボールをカメラが追っていて、その周囲に人間が配置されている。これが何を意味するのか考えていった時に、「あ、これは実際にサッカーをやってボールを追いかける少年の目線なんだ」と気付いたそうです。なので、単なるドラマとして見る大人にはピンとこなくても、実際に外でサッカーで遊ぶような少年たちにとっては、同じ視線で一緒にサッカーをしているような気分になり、だから子供たちには受けるのだろうと。まさに「ボールは友達」ってのはそれをよく表現した言葉であり、これこそが編集者がいくら勉強してアドバイスしようが漫画家本人の中に存在しないと全く出しようのない素質とか作家性みたいなものだという話を聞いて、なるほどなと思った記憶があります。そういった意味で、現代では手を変え品を変えさまざまな”サッカー漫画”が大量に生産されていても、ちゃんと「サッカーをしている」ことを描けた漫画が少なく、さらにそのパイオニアであったキャプテン翼の役割ってのはそりゃ大きくなるんじゃないでしょうか。そして、そんな筆者は完璧にその世代なのでわかるんですけど、子供の頃に「こんな風にプレーしたい!!」という理想像を見せられる影響って大きいと思いますよ。特にそれがプレイヤーの視点を共有できるならなおさらです。スカイラブハリケーン!!その共有した視点で”必殺技”なんか使われた日にはそりゃメロメロになっちゃいますよね。その甘い誘惑の前にはデッサン力や非科学的ご都合主義なんてのは屁のツッパリにもならんですよ。
ボールはトモダチ!!