6日目(2023/12/27)

刑事訴訟法第1問、第2問

第1問(捜査・職務質問に伴う有形力の行使)
 酒気帯び運転の疑いが生じたため、酒気を検知する旨告げたところ、運転者が急に反抗的態度を示し、エンジンのかかっている自動車の運転席に乗り込んで発進させようとしてので、警察官が運転席の窓から手を差し入れエンジンキーを回転してスイッチを切った。かかる行為の適法性について論じなさい。
(解答)
1 警察官が運転席の窓から手を差し入れてエンジンキーを回転してスイッチを切った行為は、職務質問に伴う有形力の行使に当たる。かかる有形力行使の可否及び限界が問題となる。
(1) まず、犯罪の予防・鎮圧という行政警察活動の目的に鑑みれば、ある程度の有形力行使は可能である。
 そして、行政警察活動でも人権侵害の危険は否定できないし、また行政警察活動と捜査の区別は明確ではない。そうだとすれば、任意捜査の原因(刑事訴訟法197条1項本文)の趣旨は、行政警察活動にも及ぼすべきである。そこで、強制手段に当たらない有形力の行使は、必要性が認められる場合には、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される。
(2) これを本件についてみる。警察官は自動車のスイッチを切ったのみで、運転者の意思を制圧したわけではないから強制手段にはあたらない。そして、本件では、運転手に酒気帯び運転の疑いが生じたところ、運転手は警察官に対し反抗的な態度を示し、エンジンがかかった自動車に乗り込んで発進させようとしている。自動車を発進されると、容易に追いつくことができない。酒気探知捜査を実施できず、また、運転者自身に対して有形力の行使を行うわけではなく、エンジンキーを回転してスイッチを切る行為は、手段としても相当である。
(3) したがって、警察官の行為は職務質問に伴う有効な有形力の行使といえる。
2 よって、警察官の行為は適法である。
以上

第2問(捜査・強制処分)
 荷送人の依頼に基づき宅配便業者の運送過程下にある荷物について、司法警察官Pは、捜査目的を達成するため、荷送人や荷受人の承諾を得ることなく、その荷物に外部からX線を照射して内容物の射影を観察した。かかる捜査の違法性について論じなさい。なお、捜査に際して、令状の発付は受けていないものとする。
(解答)
1 Pは、荷送人や荷受人の承諾を得ることなく、その荷物に外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察した(以下、「本件捜査」という)。本件捜査は承諾なく行われているところ、本件捜査が「強制の処分(197条1項ただし書)にあたり、強制処分法定主義に反しないか。
(1) まず、「強制の処分」にあたるかを検討する。
 ア この点について、科学技術が犯罪捜査に応用されたこと及び法が捜査の要件や手続に対して厳格な態度をとっていることから、「強制の処分」とは、①相手方の明示又は暗黙の意思に反して、②重要な権利利益の制約を伴う処分をいうと解する。
 イ これを本件についてみる。荷送人や荷受人の承諾を得ていないところ、荷物に外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察することは、通常、荷送人や荷受人の黙示的意思に反する(①充足)。また、本件捜査は、その射影によって荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができ、内容物によってはその品目等を相当程度具体的に特定することもできる。これは荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー権という重要な権利の制約を伴うものといえる(②充足)。
 ウ したがって、本件捜査は「強制の処分」にあたる。
(2) 本件捜査が「強制の処分」である場合、「特別の定」がないと行うことができない。本件捜査は、荷物について強制的にその形状・性質を五感の作用で感知する処分といえ、検証に当たる。
(3) そうだとすれば、強制処分法定主義には反しない。
2 次に、検証は強制処分であるから、本件捜査を行うにあたっては検証令状が必要となる(218条1項)。しかし、本件では同令状の発付を受けていない。したがって、本件捜査は令状主義に反する(憲法35条、刑事訴訟法218条1項)。
3 よって、本件捜査は違法である。
以上