7日目(2023/12/28)
民事第1問、第2問、第3問
第1問(売買契約に基づく代金支払請求権)
XがYに対して提起した訴訟(以下、「本件訴訟」という)において、X及びYは下記の通り主張した。以下の、各小問に答えなさい。
1 本件訴訟の訴訟物及び請求の趣旨を記載せよ。
2 Yの主張すべき事実を記載せよ。
3 Yの抗弁について、2で記載した各事実の主張が必要であり、かつ、これで足りると考えられる理由を説明せよ。
(Xの言い分)
私は、平成15年8月12日、Yに甲絵画を300万円で売り、甲絵画を引き渡しましたが、代金を受け取っていません。Yに対し、300万円の代金の支払いを求めます。
(Yの言い分)
Xの主張する売買代金債権は、10年以上も前のものであり、時効により消滅しています。そして、私は、Xに対して、消滅時効を援用するとの内容を記載した内容証明郵便を送り、同郵便は平成26年3が津4日にXのもとに届いています。
(解答)
第1 設問1について
1 訴訟物
売買契約に基づく代金支払請求権
2 請求の趣旨
被告は原告に対し、金300万円を支払え
第2 設問2について
①平成25年8月12日は経過した。
②Yは、平成26年3月4日、Xに対し、本件売買代金債権の消滅時効を援用するとの意思表示をした。
第3 設問3について
1 消滅時効の要件事実は、ア)権利を行使できる状態になったこと、イ)ア)の時から10年間が経過したこと、ウ)援用権者が相手方に対し時効援用の意思表示をしたことである。
2 ア)について、民法166条1項2号により必要とされる。しかし、権利行使が可能な状態になっていることは、Xが請求原因において売買契約の成立を基礎づけており、すでに現れている。そのため、抗弁としてあらためて、権利行使が可能となったことを主張する必要はない。
3 イ)について、債権については10年間の経過の事実が必要である(166条1項2号)、140条により、本件売買契約の翌日である平成15年8月12日から10年間の経過の時点で時効期間が満了する。
4 ウ)について、時効による権利効果の消滅は、時効期間の経過とともに確定的に生じるものではなく、時効が援用された時に初めて確定的に生じるものと解する。そのため、時効の援用は、権利の得喪を確定させる意思表示として必要となる。
5 以上より、上記①及び②の事実の主張が必要であり、かつ、これで足りる。
以上
第2問(売買契約に基づく代金支払請求権)
XがYに対して提起した訴訟(以下、「本件訴訟」という)において、X及びYは下記の通り主張した。以下の、各小問に答えなさい。
1 本件訴訟の訴訟物及び請求の趣旨を記載せよ。
2 Yの主張すべき事実を記載せよ。
3 Yの主張について、その事実から生じる実体法上の効果を踏まえて、それが抗弁となる理由を説明せよ。
(Xの言い分)
私は甲土地を所有していましたが、自分では使わないため、誰かに売ってしまおうと考えていました。そこで、Yに相談したところ、Yが甲土地を買ってくれるというので、平成25年9月4日に代金5000万円で甲土地を売買することを合意しました。ところが、Yは代金を支払おうとしないので、Yに代金5000万円の支払いを求めます。
(Yの言い分)
私は、甲土地の近くに新駅の設置計画があり、将来甲土地の地価が上がると信じてXから甲土地を買いました。そして、私は、売買契約の際、Xに対して、新駅設置に備えて、有料駐車場を運営するために甲土地を購入する旨を伝えています。しかし、新駅設置などという話は実際には存在しなかったので、売買契約を取り消したいです。
(解答)
第1 設問1について
1 訴訟物
売買契約に基づく代金支払い請求権
2 請求の趣旨
被告は、原告に対し、5000万円を支払え。
第2 設問2について
① Yは、本件売買契約当時、甲土地の近くに新駅の設置計画がなかったにもかかわらず、これがあるものと信じていた。
② Yは、本件売買契約の締結に際し、Xに対し、上記計画に備えて有料駐車場を運営するために甲土地を買い受ける旨を述べた。
第3 設問3について
Yの言い分は、請求原因の売買契約を行うにあたり錯誤があったと主張するものである。95条1項によれば、契約が錯誤に基づく場合、当該契約に基づく売買代金請求権を取り消すことができる。したがって、錯誤の主張は、売買契約に基づく代金請求権の発生を消滅させるとして、抗弁となる。
以上
第3問(売買契約に基づく代金支払請求権)
XがYに対して提起した訴訟(以下、「本件訴訟」という)において、Xは下記の通り主張した。
以下の、各小問の答えなさい。
1 本件訴訟の訴訟物及び請求の趣旨を記載せよ
2 Xの主張すべき事実を記載せよ
3 本件のXの主張は、有権代理の主位的請求原因、代理権消滅の抗弁を前提とする予備的請求原因に位置づけられる。当該主張が、再抗弁ではなく予備的請求原因として位置づけられる理由を説明しなさい。
(Xの言い分)
私は、Aとの間で、平成26年2月18日に、甲という絵画をYに200万円で売るという契約をしました。Yは、Aに甲の売買についての代理権を同年1月3日に与えたということは認めていますが、その後、YはAとの金銭上のトラブルを抱えて当該代理権の授与を取り消すとの意思表示を同月30日にしたと主張しているようです。しかし、Aの代理権が消滅していたとしても、そのような事情は、全く私には伝わっていませんでした。したがって、Yは、甲の売買についての責任を負うべきなので、200万円の支払いを求めます。
(解答)
第1 設問1について
1 訴訟物
売買契約に基づく代金支払請求権
2 請求の趣旨
被告は、原告に対し、200万円を支払え。
第2 質問2について
① Aは、平成26年2が津18日、Yに対し、甲という絵画を代金200万円で売った。
② Aは、①の契約の際、Yのためにすることを示した。
③ Yは、平成26年1月3日、Aに対して、①の契約締結についての代理権を授与した。
④ Xは、①の契約の際、Aの代理権が消滅していることを知らなかった。
第3 設問3について
本件のXの請求は、民法112条1項の表見代理に基づく請求である。そして、再抗弁は、抗弁の法律効果の発生を障害し、請求原因事実の法律効果を復活させるものをいうところ、同条は表見代理の規定であり、有権代理の主張を復活させるものではない。そのため、同条に基づく主張を有権代理の請求原因、代理権消滅の抗弁に対する再抗弁と位置づけることはできず、有権代理の主位的請求原因、代理権消滅の抗弁を前提とする予備的請求原因として位置づけられる。
以上