内密出産

筆者の父方の出身は熊本県上天草市松島町です。

そして、熊本市には、筆者が尊敬してやまない医療機関である慈恵病院があります。

当社の経営理念の第一には、少子化ストップを掲げていますが、その取り組みとして、赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)や内密出産の制度を整え、事情のある赤ちゃんとお母さんの命を守る取り組みをされています。

2022年2月4日、病院以外に身元を明かさない「内密出産」を独自に導入している熊本市の「慈恵病院」は2021年12月に内密出産を希望する女性が出産した赤ちゃんについて、女性の希望を踏まえて親の名前を書かずに出生届を提出する方針を明らかにしました。これは、国内で初めての「内密出産」になるとされます。

熊本市の慈恵病院が記者会見で明らかにしました。慈恵病院は、予期せぬ妊娠をした女性の自宅などでの「孤立出産」を防ぐため、病院以外に身元を明かさずに出産する「内密出産」を独自に導入しています。病院は去年12月、内密出産を希望する西日本在住の10代の女性が赤ちゃんを出産し、女性は子どもが成長して親の情報を知りたいと希望した時のために、病院の新生児相談室長だけに名前や住所などの個人情報を明かしていました。

病院は、女性が退院したあとも連絡を取って、子どもを育てる意思があるか確認を続けてきましたが、女性は「赤ちゃんに会いたい気持ちは変わっていないが、自分よりも特別養子縁組をした親のもとで育ったほうが、子どもは幸せになると思う」などと話しているということです。病院は、女性の希望を踏まえ出生届に親の名前を書かず、空欄のまま提出する予定で、国内で初めての「内密出産」になるとしています。

慈恵病院の蓮田健院長は「内密出産は、お母さんの安易な育児放棄を助長するのではないかという批判があるかもしれないが、赤ちゃんの安全な出生と保護という目的があるので理解してほしい。今後、赤ちゃんの養育や出自の取り扱いについて、行政と話し合っていきたい」と話しています。

赤ちゃんポストも運営

慈恵病院はまた、母親不明のままで赤ちゃんを預かる、全国で唯一の赤ちゃんポストも運営しています。昭和53年に開設された病院で、産婦人科や内科の診療を行っています。平成19年からは「こうのとりのゆりかご」という名前で、親が育てられない子どもを匿名で受け入れる、いわゆる「赤ちゃんポスト」を全国で唯一運営しています。

内密出産の具体的な運用方法は、以下のようなものです。

自宅などでの「孤立出産」を防ぐため、病院以外に身元を明かさない「内密出産」ですが、予期しない妊娠をして子どもを育てることが難しい女性に対して、医療機関が匿名を保障したうえで出産する方法です。医師や助産師が立ち会わない危険な出産を避け、母親と子どもの命を守ることが目的で、厚生労働省によりますと、これまで国内で実施されたケースは報告されていないということです。妊娠を誰にも知られたくない女性が病院だけに身元を明かし、病院では、生まれた子どもが一定の年齢になって希望した場合、親が誰であるかなどの情報を開示するとしています。日本では内密出産に関する法律はなく、厚生労働省はおととし、慈恵病院のある熊本市から違法性がないかという照会を受けたのに対し「法令に直ちに違反するものではない」とする見解を示しました。

そのうえで熊本市に対し、

▽病院が内密出産を希望する女性に丁寧に相談を行い、特別養子縁組の制度について伝えるなどして、内密出産を回避できるようにすることや、
▽病院が受け入れる場合は、子どもが出自を知る権利の大切さを女性に説明すること、
それに、
▽子どもが生まれた場合は、市と病院が連携して子どもの福祉を守ることなどが必要

などとする見解を示しています。

また、法務省は内密出産で生まれてくる子の戸籍について、熊本市の照会に対し「仮定の事実に基づく照会への回答は困難」としたうえで「一般論として、出生届の母親の欄が空欄だとしても、日本国籍だと認められれば戸籍に記載する」と回答したということです。どうやって日本国籍だと認めるのか、その法的構成が難しいことではありますが、これは病院が母親が日本人であることの証明をするようなことで、クリアできるでしょう。

一方、熊本市は去年11月、内密出産について「法律に抵触する可能性を否定できない」という認識を改めて示し、病院に対して「内密出産を前提とした指導は行わない」という考えを伝えています。

今回の内密出産の経緯と病院の対応(詳しく知りたい人向け)

慈恵病院によりますと、去年11月、西日本在住の10代の女性から「名前や住所などを明かさずに出産したい」という相談が寄せられ、女性は去年12月、病院で赤ちゃんを出産しました。

女性は、子どもが大きくなって親の情報を知りたい場合に備え、病院の新生児相談室長ひとりだけに名前や住所を明かし、併せて健康保険証と卒業した高校の学生証のコピーも病院に提供しました。

病院では、子どもが一定の年齢になった時に、女性の情報を開示することにしていて、健康保険証などは封筒に入れて金庫で厳重に保管しているということです。

一方、病院は、赤ちゃんの出生届について、女性の名前を記入せずに匿名で提出することを検討しましたが、女性の身元を知りながら、それを伏せて出生届を提出すると公正証書原本不実記載の罪に問われるおそれがあるなどと熊本市に指摘されたため、先月、匿名で出生届を提出することが法令に抵触するかどうかを確認する質問状を熊本地方法務局に提出しており、これに対する一応の当局の見解を得たとして、母親欄空欄のままの出生届の提出に踏み切る模様です。

政府や熊本市の対応(マニア向け)

官房長官は、これを受け、「政府として支援の充実に努める」としました。

松野官房長官は、午後の記者会見で「一般論として、子どもの出自を知る権利をどう考えるかや、未成年が内密出産を希望する場合の支援の在り方などの課題がある。政府としては、妊娠に悩む女性が安心して相談できる窓口の整備や子どもを育てられない場合に利用できる特別養子縁組等の制度の周知、予期せぬ妊娠をした妊産婦などへの支援の充実に努めていく」と述べました。

また、内密出産に違法性があるかどうかについて「厚生労働省の所管法令には直ちに違反と考えられる点はないが、刑法上の犯罪にあたるかどうかは、捜査機関により収集された証拠に基づき、個別に判断されるべき事柄と考えている」と述べました。

熊本市長は、「引き続き 病院と情報共有し連携」としています。

慈恵病院が「内密出産」になると発表したことに関して、熊本市の大西一史市長は「今回のケースについて引き続き慈恵病院とも情報を共有して連携していく。そのうえで、今後の課題や行政としてやらなければならないことを明らかにし、個々のケースに応じ、どうすれば母子の安全と子どもの健やかな成長への支援が行えるのか、国とも十分に連携しながら対応したい」というコメントを発表しました。

赤ちゃんの命を救うために、いろんな大人がそれぞれの立場で頑張るのは良いことです。

以上