「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法案」に反対する

国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案

「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案」というのは、独立行政法人化学技術振興機構に、10兆円の基金を積んで運用し、文部科学省が認定する国際卓越研究大学に資金を配分するという法案です。

なんだか素晴らしく卓越した内容だと思いますが、筆者は絶対にうまく行かないと思います。

まず、日本に国際的に卓越した研究大学なんてありません。

世界大学ランキング50位以内に、かろうじて東京大学がひっかかっている程度の我が国に、国際的に卓越した要素を求めるのが酷というものです。

さらに、欧米列強の有力大学は、自ら基金を形成してその運用益を自らの大学の研究に使っています。素晴らしい研究成果が出たら、基金にも資金が集まり、より研究が充実するという好循環が生まれてきます。しかしながら、素晴らしくない研究成果ばかり出している大学には、その基金も枯渇し、そのような効果が生まれず退潮します。当たり前の話です。

日本の有力と言われる大学たちは、そのように自らのリスクで自ら基金を形成してその運用益を自らの大学の研究に使っていません。使っているかもしれませんが、その規模や理念は到底海外の有力大学に及ばないでしょう。もちろん学費が桁違いに安いということもあり、教育機関としての一定の有用性は筆者も認めるものでありますが(筆者も世界大学ランキング50位内から滑り落ちてしまった大学を卒業した者として、責任を痛感しているものですが)、あきらかに、基金により自らの研究を充実させ、世界に向かって勝負している大学同士の国際競争において、自ら教育研究を行わない日本の独立行政法人に基金を積んだところで、そのような効果は生まれません。

次に、日本の文部科学省には国際的に卓越した研究を行う大学を認定できる能力はありません。そんなのができているのであれば、日本の大学たちは、国立も公立も私学もすべてみな、ずっと文部科学省の傘の下にいたわけですから、すでに国際的に卓越した研究を行う大学で溢れているはずです。

大学の研究成果というものは、政治的な思惑や行政的な管理とは、一線を画した、第一級の科学者たちによる厳密なピアレビューによって鍛えられることでしか、認定などできないものです。

学術会議を政治的なおもちゃにしたあげく、権威ぶるだけの学者の楽園にしているような我が国に、そのような本気で勝負する研究の場がないこと、それこそが、国際的に卓越した研究を行う大学が生まれてこない根本的な原因なのです。

10兆円もの基金への拠出するカネがあるのであれば、奈良時代や明治維新の日本のように、超高額の報酬で世界の第一線の科学者を、お雇い外国人として日本に招聘し、目利きをしてもらったほうがはるかに安上がりで効果も期待できます。

この法案、与党の文教族のみなさんの強い(お金への)思い入れはあるけど専門性が低い議員のみなさんと、お金で大学を管理したい、天下り先を増やしたい能力の低い国家官僚のみなさんに都合のよいだけの制度であり、国民の血税を投入する義理が立たないものだと判断します。

こんな法案を通したら、後世の国民に迷惑をかけるだけで必ず後悔するでしょう。国民に対する責任を考えれば、こんな単なる、砂漠にコップの水を撒くような所業はやめた方が良いと思います。

以上

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