中国が日本の排他的経済水域にミサイル打ち込み

当社及び筆者が注目している、福岡9区選出の無所属衆議院議員、緒方林太郎氏がこのたびの中国の日本の排他的経済水域へのミサイル打ち込みについて、ぶっ込んだ質問をしていますので紹介します。

同じことを、日本が中国にやったらどうなるか、を想像しながら聞いてください。

ここから引用

中国による我が国の排他的経済水域へのミサイル落下。元条約マフィア(条約専門家の俗称)の一員である私はかねてからこの件に関心を強く持ち、過去に岸田外相(当時)に質問し、今年、その質問を踏まえた質問主意書を出しています。

議事録の引用があるため、質問文が長いですが、安全保障に関心のある方にとっては、非常に重要なやり取りとなっています。是非、読んでみてください。

【質問】
弾道ミサイルと排他的経済水域に関する質問主意書

 平成二十九年三月十日の衆議院外務委員会において、次のようなやり取りがある。

○緒方委員 (略)国連海洋法条約では、排他的経済水域そして大陸棚には主権的権利というのが認められています。主権ではないですけれども、主権的な権利という非常に微妙な言葉が使われているわけでありますが、今回日本のEEZにミサイルが落ちたことによって、私は、実は、日本の主権ではない、だけれども主権的権利というものが侵害をされたのではないですかというふうに、昨日お伺いしました。
 通告がありませんでしたので、きょう再度お伺いをさせていただきます。岸田大臣、いかがお考えでしょうか。

○岸田国務大臣 昨日、委員の方から御質問をいただきまして、改めて私も国連海洋法条約を確認してみました。
 そうしますと、国連海洋法条約五十六条の一に、沿岸国はEEZにおいて天然資源の探査、開発、保存及び管理等のための主権的権利を有している、こう記されています。要は、この主権的権利とは、天然資源の探査、開発、保存及び管理、こうしたことを行うことを指していると承知をします。そして、その上で、今度は五十八条の三には、他国のEEZにおいて、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払わなければならない、こうした規定が設けられています。
 そして、委員の御質問は主権的権利が害されたかどうかということだと思いますが、要は、この条約上、軍事訓練が行われたとしても、妥当な考慮が払われていたならばそれは可能であるとされています。EEZ内で軍事的な訓練を行うということは、これは先ほど言いました天然資源の探査、開発、保存及び管理といったこの権利を害するかどうか、これは判断が大変難しいものがありますが、そうだとしても、条約上は、妥当な考慮が払われていればそれは可能であるというふうに解釈するべきであると承知をしています。
 そして、今回の北朝鮮によって発射された弾道ミサイル、我が国のEEZ内に落下したわけでありますが、これは、何らの事前通報もなかったことを鑑みれば、我が国の権利及び義務に妥当な考慮を払ったとは言いがたい、このように考えるべきであると考えます。

○緒方委員 いや、最後の一言がなかったんですけれども、妥当な考慮が払われていなかったことをもって主権的権利が害されたというふうに大臣はお考えですか。

○岸田国務大臣 主権的な権利が害されたかどうかというのは大変難しい判断であると聞いております。
 そして、害されたかどうかを判断するよりは、妥当な考慮が払われていたかどうか、これが重要であるというのが、この条約の解釈の仕方であると認識をいたします。これは、軍事訓練であっても事前通報があれば可能であるというのが、この条約における解釈のありようだと承知をしています。
 そのことを考えますと、妥当な考慮が払われたかどうか、これこそ最も重要なことであり、今回は払われていなかった、これはその点で問題であると認識をいたします。

 以上を踏まえ、次のとおり質問する。

一 我が国に事前通報をした上で、その権利及び義務に妥当な考慮を払えば、他国は我が国のEEZ(排他的経済水域)に弾道ミサイルを落下させる事が可能なのか。
二 政府として、上記岸田国務大臣(当時)の答弁で表明された立場を踏襲しているか。
【質問終】

【答弁】
衆議院議員緒方林太郎君提出弾道ミサイルと排他的経済水域に関する質問に対する答弁書

一について
 国際法上、いずれの国も、排他的経済水域においてその権利を行使するに当たり、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとされている。その上で、お尋ねについては、個別具体的な状況に応じて判断する必要があるため、一概にお答えすることは困難である。

二について
 御指摘の答弁で示された政府の立場に変わりはない。
【答弁終】

つまり、中国が事前にミサイル発射を通報していたら、妥当な考慮を払ったという事で問題無し、という可能性が高いのが政府の立場です。勿論、排他的経済水域というのは、基本的には公海だけど、水産資源や地下資源については主権的権利を持つという位置付けですので、フルマックスに主権を主張出来るわけではありません。ただ、この日本のポジションでいいのか、という点は大いに議論されるべきです。与野党越えて、緒方質問について議論してほしいです。

また、今回の事案を受けて、中国は「日中間の排他的経済水域の境界については未画定」と言っているようですが、(様々な判例の経緯はあるものの)現在は排他的経済水域も、大陸棚もまずは中間線をベースに考えるというのが国際司法裁判所の判例です。日本の主張の方に分があります。

中国はよく「法戦」という言葉を使います。国際法を駆使した戦いです。元条約マフィアとしては「やってやろうじゃねえか、この野郎」という姿勢を持ちたいと思います。

我らが「有志の会」は、各人がその専門性を活かしてきちんとした質疑をしていると、5人全員が自負しています。手前味噌かもしれませんが、一騎当千でありたいとの気概を持って国政に臨んでおります。