憲法第14問

2022年9月21日(水)

問題解説

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問題

公立小学校であるA小学校は、児童の授業の実際の場面を父母に参観してもらうことを目的として、恒常的に日曜参観授業を実施している。Xは、自己の信仰する宗教団体が実施する教会学校に出席することを理由に日曜参観授業に欠席したため、指導要録の出欠記載欄に欠席と記載された。
なお、指導要録は、学校教育法施行規則第28条第2項ただし書により、20年間、保管される。また、Xの信仰する宗教団体は、日曜日の午前中の礼拝を信仰上特に重要なものと位置付けており、教会学校でも毎日曜日の午前中に礼拝が行われている。以上の事例に含まれる憲法上の問題点について論じなさい。

解答

1 A小学校が、日曜日に授業参観を実施し、これに欠席したXについて、指導要録の出欠記載欄に欠席と記載したこと(以下「本件措置」という。)は、Xの信仰の自由を侵害し、20条1項に反して違憲ではないか。
2 確かに、A小学校は、Xを欠席扱いとしているにすぎず、Xが特定の宗教を信仰すること自体は禁止されていない。
しかし、A小学校は、日曜日に授業参観を行っているから、Xにとっては、これに出席するか、自己の信仰する宗教団体が実施する教会学校に出席するかの二者択一を迫られることとなり、やむを得ず前者を選択すれば、Xの信仰の自由が必然的に害される関係にある。
そのような意味において、本件措置は、Xの信仰の自由を制約するものである。
3 では、A小学校の上記取扱いは、「公共の福祉」(12条、13条)によるものとして、正当化されるのか。
(1) 20条1項は、信教の自由、そして宗教的活動の自由が歴史的に弾圧されていたことから、19条1項、21条1項等の規定があるにもかかわらず、これを特に保障したものであるといえる。そして、Xが信仰する宗教団体は、日曜日の午前中の礼拝を信仰上特に重要なものと位置付けており、教会学校でも毎日曜日の午前中に礼拝が行われて いる。これに参加することは欠くことができないものであり、信仰の核心部分に関わる真摯なものである。また、出欠記載欄に欠席と記載された指導要録は20年間保存され、欠席という事実が長期間残存する。
そのため、Xの信仰の自由に対する制約は強度であり、厳格な基準で判断すべきであるとも思える。
(2) しかし、授業参観の実施に関しては、当該学校の方針、従来の取扱い、他の生徒への配慮等、様々な事情を考慮する必要があり、A小学校側に広い裁量権が認められる。
また、A小学校は、Xの信仰活動そのものを妨げているわけではなく、授業参観に参加しなかったことをもって欠席扱いとしたにすぎないため、Xの信仰の自由を直接的に制約するものではなく、間接的に制約し得るに過ぎないといえる。
そして、Xが受ける不利益は、出欠記載欄に1日の欠席の記載がされるという軽微なものにすぎない。これに参加しなければ、進級や卒業が不可能又は著しく困難となるというような事情もない。
加えていえば、授業参観への出席を求めること自体は、Xの信仰と相反するものではない。
そうだとすれば、厳格な基準で判断するのは妥当ではなく、本件措置が、当該処分者の裁量権の範囲を超え又は裁量権を着用してされたと認められる場合に限り、違憲であると解すべきである。
(3) 日曜日以外を特別に宗教上重要な日とする宗教があり得るため、授業参観を他の曜日に変更しても同一の問題が起こり得るといえる。
かといって、Xのみ授業参観の出席を免除することは、かえって公教育の宗教的中立性を損なうことになると考えられる。これにより、当該児童の公教育上の成果を阻害し、公教育が集団的教育として挙げるはずの成果をも損なうことにならざるを得ず、公教育が失うところは少なくない。
また、授業参観は、子の学校での様子や、学校の教育の方法等を、 子の父母等に見せるために、教育上必要な授業である。そして、父母等に多く参加してもらうためには、生徒及び父母の一般的な日曜日の過ごし方、父母の働き方から考えても、日曜日に授業参観を行うことについて必要性、合理性が認められる。そのため、適切な代替措置を行うことは困難であったといえる。
さらに、上記のように、授業参観への出席を求めること自体がXの信仰を害するものではないことからすれば、代替措置を講じる必要性も低い。
以上からすれば、A小学校校長に裁量の逸脱・濫用は認められないといえる。
4 したがって、上記処分は、合憲と解するべきである。
以上

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