貧乏地方都市北九州市に明日はあるか

夕張市並みにヤバい北九州市

都道府県から事務や権限を移譲されて仕事量が多いのに、地方交付税は小さな市町村に手厚いため割を食った格好なのが政令市だ。財政状態は総じて見劣りし、1人当たり実質債務が3位の北九州市(104万円)、7位の京都市(97万円)、11位の広島市(92万円)などは、実質債務自体が5年前と比べて増えている。

2017年度から小中学校の教職員の人件費負担が都道府県から政令市に移管されたことや、2019年10月から幼児教育・保育の無償化がスタートしたことも影響している。後者は、公立の保育所と幼稚園についてはすべて市町村負担となり、財政の圧迫要因となっている。名目上は財源とセットだが、政令市は待機児童の問題もあり持ち出しが多い。

1兆円を超す地方債残高を抱える北九州市は、「過去にかなりの規模で投資を行ってきた」(財政課)と認める。風力発電関連産業の拠点整備などに注力し、SDGs(持続可能な開発目標)の先端都市として評価されている面はある。

これまで年700億円以上使ってきた投資的経費について、2021年にようやく「620億円以内に抑える」(同)方針を決めたが、地方債残高は維持するのが精いっぱいで、「5年後に見直す」(同)としている。その間も、環境工場(ごみ処理施設)は別途200億~300億円かけて整備するというから、財政は当分健全化しない。

あの京都市よりヤバい

身の丈を超えた公共投資で、京都市の財政悪化ぶりは全国に轟いている。こちらも投資的経費が長らく高水準で、借金が積み上がった。平成前半の東北部クリーンセンター建設や梅小路公園整備、京都コンサートホール建設などが終了した後も、大阪市など他市と比べ公共事業の削減が緩やかだったことに起因する。

赤字続きの地下鉄事業への支援や重い人件費負担もあって、地方債償還のために積み立てた減債基金を取り崩す「禁じ手」を繰り出している。ここ3年間は、新型コロナウイルスの感染拡大でインバウンドを中心に観光客が大きく減ったのも誤算だった。

債務が多い市区に共通するのは、ハコモノ建設などに熱心で身の丈を超えた公共投資を続けてきた点だ。多くの自治体が財政健全化に舵を切る中、対応が後手に回ってしまったと言った方がよいかもしれない。

今後の他市との行政サービス競争を考えた場合、若い住民に選ばれなくなるリスクは高まる。