(2019/12/17)フィンランドの34歳新首相の誕生と日本の新国立競技場の竣工を対比してその違いを論じたいと思います

廃墟のイメージ(オリンピックレガシー)

おはようございます。

2019年12月の、北欧フィンランドの追っかけ記事です。

人口551万人、日本で言えば北海道(524万人、全国8位)、福岡県(511万人、全国9位)といった地方自治体と同規模程度の、広大な森林と湖を持つ美しい白夜の国、それがフィンランドですが、この国のかじ取りを任された新しい首相に、サンナ・マリーン社会民主党党首(34)が12月10日に就任しました。

2019年12月現在、現職で世界最年少の首相となります。

そして、この首相が率いる内閣は、他の4党と連立政権を組んでおり、サンナ・マリーン社会民主党党首を含む、政権5党の党首は全員女性、かつ、そのうち4人が35歳以下という、「日本では考えられない」レベルの最高行政執行部が出来上がってまいりました。

国レベルでこれだというフィンランドに対して、日本では、同人口規模の地方自治レベル、地方公共団体レベルでもこんなに若い、かつ女性が閣僚の過半を占めて主要政党のトップもすべて女性であるといった話は聞いたことがありません。

首相は若いので、就任後早速ツイッターで、「全ての子どもが何にでもなれ、全ての人間が威厳をもって生きていける社会を作りたい」と世界に向けてあいさつしました。

内閣の構成ですが、全19人の大臣のうち、12人が女性、男性は7人です。

他国の例では、19人中7人が女性閣僚であるというだけで、女性の社会進出が進んでいる、といった「好意的な」目が注がれる、そんな「甘い」世の中ですが、この国はそうではありません。

若かろうが、女だろうが男だろうが、政治は結果が全て。

34歳の新首相も、「女性だから」優しく遇されるといったことは全くなく、むしろ厳しい、連立内閣内での綱引きや、交渉、亀裂を乗り越えた対応や妥協と、さまざまな修羅場をくぐることになるのでしょう。

人は、本番環境でしか本当には鍛えられない、と言われますが、どんなに練習しても、やはり実地の本番や実際の試合を経験しなければ、人の能力や技能はアップしません。

さて、目を転じまして日本においての新しいものといいますと、ようやく来年の2回目の東京オリンピック2020に向けた「新」メインスタジアムが完成し、そのお披露目も行われたということですが、こちらも、当初のコンペを勝ち抜いたザハ・ハディド氏の案を白紙撤回して(その後ザハ氏は逝去され、「憤死」とも言われました)、全く新しい仕様でコンペをやり直して今の形に決まったという経緯があります。

少し前の大騒動を思い出される方もおられるかもしれませんが、「新」国立競技場はその費用面を巡って揉めにもめ、2015年にこれまでの計画を一転して白紙撤回となり、招致コンペを勝ち抜いたザハ案を、安くないキャンセル料と引き換えに廃案(お蔵入り)とし、新たな要求仕様に沿った全く新しいものに切り替えました。

さて、この「新」仕様によりまして、建築額面の費用こそ約1,600億円に抑えられたのですが、画期的なことに、「屋根がなく空調も不完全」な、「完成後の利用計画が見えない」代物が出来上がってしまいました。

まさに使い捨て感満載の競技場です。

海外でオリンピックをやる場合は、この「用地・建物含めてその地域ごと」使い捨て、というのが「常識」でありまして、2016年に行われたリオデジャネイロオリンピックのメイン会場も、すでにただの廃墟となっているということは、「世界の常識」であるはずなのですが、そもそも、おもてなし大国、もったいない文化の国日本としては、そのような使い捨てしてCO2を出しまくるのではない、持続可能社会に踏み出す一歩として、あの世界各国のオリンピック招致合戦を勝ち抜き、そして「お・も・て・な・し」とオリンピック委員会の公用語フランス語でも招致プレゼンテーションを行った日本の女優さんの活躍もあり、見事招致を勝ち取ったという経緯があったはずです。

しかしながら、その後その女優の夫となる4代目世襲政治家の「日本では」「比較的」若い環境大臣は、不名誉なことに国際機関での化石賞といった不名誉な賞をもらう羽目になってしまっております。

日本は、どこで間違えてきたのでしょうか。

「新」国立劇場は、こうしてメンテナンスコストを減額する対応を全くとらない一時使用に振り切った仕様として、額面を減らしましたが、逆に(筆者はビルメンテナンス現場は長いのでよくわかります)年間維持費が約24億円に膨らむことになってしまいました。

もう一度仕様を削ってしまった点を申し上げますと、①屋根がなく空調も不完全な競技場であり、②それゆえに完成後の利用計画が不明なまま、という大きな問題があります。

こんなのは、ビルメンについては若干の業務経験はあるものの、建築の専門家でもスポーツの専門家でもない筆者が語るまでもなく、すでに多くの有識者が勇気を持って指摘している通り、屋根のないスタジアムでは使用用途が限られてしまい、年間約24億円もの維持費をペイする運営をすることは極めて困難です。

つまり、①ゆえに、②になっているというわけです。

半屋外コンサートといった無理やり利用も不可能ではないでしょうが、この巨大な規模での屋根なし会場となれば、逆に屋外に振り切って行ったほうがいいわけで、集客力と企画力のあるビッグネームも遠慮することは明らかです。

何しろ、雨だとチケット払い戻し、というような大規模公演は、リスクが大きくてやってられません。

さらに、美術品や新商品の展示会なども天候リスクが高すぎて無理であり、MICEのほとんどの用途に黄信号が灯ってしまうのです。

最後に残る、(陸上以外の)スポーツ利用についても、五輪後の球技専用への再改修が、これまた費用がかかるということで見送られ、陸上トラックを残すといった報道もあります。

すべて、行き当たりばったりなわけです。

そして、陸上トラックを残すとしても、世界陸上レベルや日本選手権レベルにおいては必要不可欠な「サブトラック」が存在しない!ために、陸上大会にはそのまま転用できない、オリンピックの陸上競技の本番のみ可能な会場というわけでして、これでは次の、「3回目」の東京オリンピック(おそらく50年以上後)まで「オリンピックレベルの競技会リハーサル」で回さなければならないわけで、もう何がなんだかわからない、という代物となっております。

木で出来ているため、火を燃やし続ける聖火台も屋内に設置できない(公式には「未公表」というステータス)、というおまけつきです。

何事も、熟慮せず過ぎた規模のおもちゃを勢いと時間のなさに任せて作ってしまうと、ろくなことにならない、というお手本のような事例だと思っています。

オリンピックのその後の利用状況を眺めながら、筆者も五輪(オリンピック)に限らず、大規模イベントにおける既存施設の積極的再利用や使いまわしといった、利用計画について思案していきたいと思います。

フィンランドと日本、こちらからの検討は以上です。

(追伸)

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この記事の解説動画をここから見れます
https://www.youtube.com/watch?v=vVkDHTvtiWc

(2019年12月17日 火曜日)

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