売上36億円の風車会社を2,000億円で買う日本石油

高い買い物

石油元売り大手のエネオスホールディングス(以下HD)が、再生可能エネルギー大手のジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)を買収する方針を固めたそうです。

2012年創業の、売上高36億円の風車会社の買収金額は2,000億円とのこと。200億円でも高すぎなところに、脱炭素の流れなるブームに乗って、日本随一の石油元売会社が大金をドブに捨てようとしています。

確かに、脱酸素の流れはあり、石油業界は事業構造の変革を求められているのは確かでしょう。

しかしながら、その打ち手として環境負荷が高く、工事にお金がかかり、メンテンナンスも大変、強すぎる風のもとでは風車をたたまないと壊れてしまい、おまけに送電網は膨大になる、という風車会社の巨額買収はないなという感想です。

同社としては、再エネ事業の拡大で収益源を確保する狙いがありますが、株価は暴落するのではないでしょうか。

ちなみに、JREの株主は、米金融大手ゴールドマン・サックス(GS)とシンガポールの政府系投資ファンド(GIC)です。

相手はいたいけな日系石油卸に比べ、一枚も二枚も上手の世界金融屋です。

JREは2012年にGSが設立。日本や台湾でも計60の太陽光や風力発電所を手掛け、合計出力は約88万キロ・ワット(原発約1基分)に上ります。

では原発一基買った方が、よほど脱酸素社会に貢献できると思うのですが、いかがでしょうか。

東京商工リサーチによると、2020年12月期の売上高は36億円余りで、最終利益は6億円余りです。

つまり、この投資、2,000億円の回収には、333年(3世紀強)かかる計算です。

エネオスは2021年5月に見直した中期経営計画で、石油や石炭などの権益売却で2.200億円の現金を捻出し、再エネなどの投資に4,000億円をあてる方針を示していました。

今回の買収額はその半分に相当しますが、こんな風力発電規模なら、どうして自前でやらないのでしょうか。

確かに、日本政府は総発電量に占める再エネの割合を現状の約2割から2030年度には36~38%に高める計画を立てており、その先には前の環境大臣小泉進次郎氏がおぼろげながら見えてきた46%をエネオスはこれまで国内で太陽光や風力発電などを手がけており、JREを買収することで再エネの規模を拡大するそうです。

売上高6兆円の巨大企業の買収にしては、売上高が2桁ほど小さい(売却高は2桁多い2,000億円)風車会社の買収劇ですが、日本企業の巨額企業買収の失敗事例として当社が勝手に四天王として記録している

①NTTコミュニケーションズは2000年8月に、6,000億円を投資して、アメリカのベリオを買収。NTTグループとしてはM&Aにて悲願の海外進出をでき成功を感じていましたが、業績は悪化していく一方でわずか1年後の2001年9月中間期で5,000億円の減損損失を計上しています。

②日本郵政による2015年5月の、オーストラリアの物流子会社のトール・ホールディングスの買収。日本郵政は上場を前に成長戦略を立てる必要があり、そこでたまたま出ていたトール・ホールディングスを買収しました。実際に日本郵政も買収後に経営陣を送り込むことなく、放置状態が続いた結果として、4,000億円以上の減損損失を計上しています。

③大手飲料メーカーのキリンホールディングスも海外企業のM&Aに失敗。2011年8月にキリンは、ブラジルビール大手のスキンカリオールを約2,000億円で買収し、2015年には減損損失を1,100億円に計上しました。日本国内では人口の減少が問題となっているなか、市場が縮小し売り上げが得られない状況になっていたので、新興国のブラジルに事業を進出させようとした目論見ですが、予想に反してブラジルの景気が低迷してしまいました。

④東芝のM&A失敗事例。2006年2月に東芝はアメリカの原発大手ウェスチングハウスとM&Aを実施しましたが、2011年の東日本大震災の影響により世界的に原発の安全性に対しての懸念が強まり、当時の想定に反して収益を上げられない状況になってしまいました。このM&Aで東芝はのれん代3,300億円が計上されたうちの2,600億円もの減損損失が生じてしまいました。

に続く、第五の失敗事例として記録される最右翼と予想いたします。

ちなみに、国際エネルギー機関(IEA)によると、再生エネへの投資が2020年に初めて石油・ガスを上回ったとのことです。

投資家からは脱炭素時代を見据えた経営戦略を求める声が強まっており、欧米の石油メジャーも収益の多角化を模索していますが、20円の風車のおもちゃを、2,000円で買って喜んでいるようでは先が思いやられます。

さすが海賊と言われた男、で出てきた日邦石油さんです。

以上

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追伸

読者よりご質問を頂戴しました。以下やり取りを記録します。

(読者:以下読)風力の権利をまだ大量に持っているんじゃないでしょうか?その権利を買ったということではないんでしょうか?そうでなければ、ただのバカなのか・・・。

(筆者、以下筆)ただのバカに500点。権益がもしあるなら、鉱山会社や商社のように、プレスリリース等の記事に出すはずです。

(読)ですよね。ただ勘繰りたくはなります。JREはかなり権利買い込んでましたよ。

(筆)だったら、権利を個別に精査して、いいやつだけ買えばいいだけのことだと思います。まとめ買いには、変なのが混じっているのが常でして、そして、変なのばっかりの混ぜ物である可能性も十分あります。まともな権利なら、このJREという会社が自社で実現化して、上場すればよいだけです。おそらく、それが無理だったけどなんとなくバカ高い値段で買ってくれる手ごろなカモが近くにいただけでしょう。よって、買い込んで、腐らせるに1,000点。

以上