石原慎太郎氏が逝去

石原慎太郎氏略歴

元衆議院議員、元東京都知事、作家の石原慎太郎が2022年2月1日に亡くなりました。89歳。1932年生まれ、一橋大学在学中の1956年に小説「太陽の季節」で文壇にデビューし、昭和生まれとしての初の芥川賞を受賞。同作品は映画化もされ、弟の石原裕次郎氏がデビューしました。1968年に自民党から出馬し参議院議員、1972年から衆議院議員となり、途中都知事就任なども経て合計9期当選。東京都知事は1998年から4期14年務め、2014年に政界を引退しました。

尖閣諸島を国有化

筆者が石原慎太郎氏について最も思い起こすのは、尖閣諸島の国有化事案です。日本政府は沖縄県石垣市の尖閣諸島のうち、2012年9月11日、日本国は民間所有の魚釣島、北小島、南小島の3島を20億5000万円で購入することを閣議決定しました。他の島は既に国有地か、米軍の射爆場としての賃借地でした。中国も領有権を主張する尖閣諸島の国有化を境に、日中関係は極度に冷え込みました。野田佳彦首相の国有化決断の背景には、東京都の石原慎太郎知事が4月に3島を都が買い取る考えを示したことがあります。対中強硬派で、尖閣諸島への自衛隊配置や構造物建設などを唱えていた石原氏のもとで都が所有するより、日中関係の摩擦を抑えやすいと考えたのです。しかし、構想は中国に説明する前に報じられ、中国が抗議する中での閣議決定となったことで、反発は一層大きくなりました。中国公船が尖閣諸島周辺に大挙して現れ、日本の領海に侵入する事案が繰り返されています。尖閣諸島を巡る対立を、新たに国家主席に就いた習近平(シー・ジンピン)氏が政権基盤強化に利用しているとの見方もありました。

筆者としては、領土問題は存在しないという日本政府の建前に忠実に、日本政府の腰を上げさせるために民間からの基金を募り、14億円以上の浄財を集める行動力を示した石原都知事には感謝しております。

国有化への経緯(興味ある人向け)

2008年12月8日、中華人民共和国は海洋調査船「海監46号、海監51号」2隻を、沖縄県・尖閣諸島の日本領海内に侵入させた(尖閣諸島中国船領海侵犯事件)。そして2010年9月7日の尖閣諸島中国漁船衝突事件(以下、漁船衝突事件)以降は、ほぼ毎月の頻度で、農業部漁業局(BOF)の「漁政」や国務院国家海洋局(SOA)海監総隊の「海監」などの公船を尖閣周辺海域に派遣したり、領海侵犯を繰り返し、尖閣諸島の日本の有効支配を打破するための攻勢を強めていた。それらの動きを受け、2012年4月16日(日本時間17日未明)、当時の都知事石原慎太郎はワシントンのヘリテージ財団主催のシンポジウムで行った講演で、尖閣諸島を地権関係者から買い取る方向で基本合意したことを明らかにした。購入の動機については、島に港湾施設などを整備して日本の有効支配を確たるものにするためとした。地権関係者は埼玉県さいたま市在住で、1970年代から所有者となっていた。石油関連企業や政治家から売却の話が持ち込まれていたが、全て断っていたという。石原、地権関係者、地権関係者と30年来の友人である山東昭子参院議員の仲介により半年にわたる三者の極秘交渉の末、「個人で所有するには限界がある」「政府に買い上げてもらいたいが、今の政府は信用できない」などと感じた地権関係者が都に売却を決断したとされた。

東京都は購入資金を捻出するために東京都尖閣諸島寄附金を募集し、2012年5月18日までに56,239件、7億6609万3340円が[9]、8月14日までに約9万7千件、計14億円超が、9月11日の国有化直後の9月13日までには102,622件、14億7327万円の寄附が集まった。そして「購入する前に上陸調査をする必要がある」として政府に上陸を申請したが許可されず、9月2日に海難救助船「航洋丸」をチャーターし尖閣諸島を洋上から視察した(東京都尖閣諸島現地調査)。

なお、東京都は、都民、国民の皆様から寄せられた東京都尖閣諸島寄附金を、尖閣諸島の所有者となった国に、島々を活用していく資金として託すため、また、寄附金を厳格に管理していくため、都の「基金」としている。

基金の概要
・基金の名称:東京都尖閣諸島寄附金による尖閣諸島活用基金
・基金の目的:寄附金を、国による尖閣諸島の活用に関する取組のための資金とするため
・基金積立額:1,412,984,964円

*寄附金の一部(約8千万円)は、平成24年9月に実施した現地調査や、啓発のための意見広告掲出・ポスター作成など、尖閣諸島の購入と活用のために支出した事業費に充当した。

そして、東京都は、この基金を国に託すため、毎年国に対して、海洋国家としての我が国の地位を堅持するための国境離島の維持・保全、南鳥島近海におけるレアアース泥を含む海洋鉱物資源の調査・開発の推進や、尖閣諸島の戦略的な活用など、我が国の排他的経済水域等の根拠となる沖ノ鳥島や南鳥島をはじめとする国境離島の維持・保全により、海洋国家としての我が国の地位を堅持することを目的とした国境離島に関する提案要求を行っている。今後も、国の動向を見極めながら、地元自治体と連携し、寄附金を寄せていただいた都民・国民の皆様の志が活かされるよう対応していくとのこと。

これらの東京都による尖閣諸島購入の流れに中国政府は外交部の声明で激しく反発した。このため日本政府(野田内閣)は中国政府の反発を和らげ「平穏かつ安定的な維持管理」をするためとして、国有化をする方針を決め、2012年9月3日に政府高官と埼玉県在住の地権者が協議し国有化に合意し、9月5日にはこれが明らかになった。9月10日には尖閣諸島の国有化に関する関係閣僚会合を開き、それまで賃借であった魚釣島、南小島、北小島の3島を地権者より購入し正式に国有化するという方針を最終決定した。翌9月11日、日本政府は魚釣島、北小島、南小島の3島を20億5千万円で購入し、日本国への所有権移転登記を完了した。購入費は平成24年度予算の予備費から支出された。

以上