1億円の壁

岸田総理就任から日経平均は8営業日連続の下げ

なぜ、こんなに株価は下がるのでしょうか。

岸田総理は無策なのでしょうか。

証券市場関係者や投資家には非常に受けが悪いのですが、これはわかっていてやっている節があります。

そもそも、自民党総裁選で岸田候補は、(現職の大臣でないにもかかわらず)かなり踏み込んだことを発言しておりました。

すなわち、個人の年間所得が1億円を超えると実質所得税率が低下するという、いわゆる1億円の壁問題という、金持ち優遇になっているじゃないか問題の大きな要因が、金融所得の分離課税20.315%にあるというわけです。

年収100億円の個人がいたとして、これ全て給与所得ということはありえません。必ずと言っていいほど、株式の売却益や配当収入がそのほとんどを占めるはずであり、それらの金融所得課税が、たかだか20%程度の低率なままというのはおかしい、公平性に欠けると指摘しているわけです。

今の時代、累進課税制度にまみれた給与所得でいくら高年収をうたっても、所得税に住民税、健康保険料に年金保険料と、まあ取られに取られ、たとえ給与所得で年収2,000万円だといっても、その負担は、4.5公5.5民くらいにしかならないわけです。

であればそんな頑張らず、年収は抑えて適当に国の補助金に頼ればいいやと思ってしまいます。

さらに、軽く1億円を超える所得を叩き出す人には、実はパラダイスが待っています。

株式の配当課税や売却益には、20%の税金しかかからないのです。

つまり、スタートアップで創業して上場させひと山当てた大金持ちは、自分の持ち株を売っても20%しか税金がかからず、さらにその売却益を株式投資に突っ込んで、さらに配当収入をもらうことができるというわけです。配当収入も20%の源泉課税ですから、給与所得でもらうより、遥かに有利です。つまり、自分が労働者や個人事業主として働いて給与所得や役員報酬の形でもらうと、個人所得税最高税率55%の洗礼を受けますが、ある会社に投資して、株を買い、そこから配当を受け取る形にすれば、たとえ役員報酬を0にしても、その会社が儲かりさえすれば配当課税20%でやっていけるわけです。これはおいしいですね。

2公8民。

大変良い低税率の世界です。

これが、小泉改革から延々と日本株式市場に、投資資金を呼び込むために、政府が一貫して行ってきた優遇措置であり、これゆえに、日経平均株価は小泉総理時代の7,000円から実に5倍近くの33,000円をうかがうところまで上昇したのです。

今回、岸田総理は、せめて超高所得者の実質所得税率を引き上げるため、この金融所得課税を一気に30%に引き上げようとしているので、ブルった証券市場関係者は、一斉に日本株から手を引いているというわけです。

筆者も零細投資家の端くれですが、すでに日本の証券市場は見切っており大きな資産はほぼ全て米国株投資に振り向けているので、この動きは傍観していますが、市場関係者は気が気ではないと思います。

この下落は、個々の企業の業績ではなく、株の配当や売却益の上がりから政府がピンハネする率が一気に今の1.5倍になるわけです。

400円で飲んでいた、コーヒーが、明日から600円。場代が一気に高くなった賭場に留まろうとする人は、少ないでしょう。

引き続き観察して参ります。

以上

追伸

1億円の壁の方を下げたらいいだけですよね。

つまり、個人所得税の累進性、最高税率55%を下げればいいだけです。

山のてっぺんを削るだけでいいです。

なお、手前の財源確保策としては、まず政党交付金の廃止、議員定数削減、大臣数の削減、補助金たっぷりの特別行政法人の廃止など、枚挙にいとまはないと考えております。

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