100株を1単元株とするのをやめて1株から買えるようにしてほしい

日本の株式は、単位が高すぎます。1株から買えないのです。株価ボードに、例えば1,000円と書いてあっても、実際は100株で1単元、10万円が必要になります。

多くの国民にとって、投資は身近な存在とはいえない。理由のひとつは、日本株を購入する際に高額の資金が必要となる市場のしくみにある。個人金融資産を投資へと動かすために、政府や取引所、企業は現状で100株からしか買えない日本株の売買制度を1株から買えるよう改めるべきだ。

株の購入にまとまったお金が必要なのは、日本には独特の「単元株制度」があるからだ。上場企業は株主総会の1票の議決権を与える「1単元」を100株と定め、東京証券取引所は株の最低売買単位を1単元としている。

東証プライム上場企業の1単元価格は平均で約24万円だ。最も高いファーストリテイリング株は800万円を超え、キーエンス株は約555万円、東京エレクトロン株は約455万円だ。これら約30銘柄は、年上限額が120万円の一般NISA(少額投資非課税制度)では買うことができない。

これでは複数銘柄に分散投資するには多額の資金が必要で、一般の個人にはハードルが高すぎる。各種のアンケート調査では、多くの個人が投資をしない理由として「知識不足」と並んで「資金不足」を挙げている。

一方、欧米株は1株から購入できる。米国株はアップル株(約165ドル=約2.2万円)など米主要500銘柄が平均170ドルから買える。政府が単元株制度を温存したまま「貯蓄から投資へ」を促す政策を進めれば、個人マネーが日本株ではなく米国株などに流れている状況が加速しかねない。

単元株制度の廃止に抵抗するのは企業だろう。株主数が増え、株主1人あたり年1000~2000円とされる株主管理コストが膨らむ可能性があるからだ。

これらはデジタル化で削減可能なコストだ。2023年に総会資料の電子提供制度が始まる。株主名簿を管理する信託銀行もデジタル化で費用を圧縮できよう。

パナソニック創業者の松下幸之助氏は多数の国民が株主として経営に参画することが、企業の成長につながると説いた。企業は株主の増加を前向きに捉え、個人の投資を妨げている単元株制度の廃止に積極的に協力してほしい。

1株単位売買の実現は全上場企業を巻き込む改革であり、政治のリーダーシップが必要だ。岸田文雄政権は、年末にまとめる「資産所得倍増プラン」の中に単元株制度の廃止を盛り込むべきだ。