税金を払わずに貰えた国(かつて太平洋の果てにユートピアがあった)
おはようございます。
2017年2月の記事です。
唐突ですが南の夢の島があったという話をいたします。
ナウルという国があります。
太平洋のソロモン諸島からさらに北東へ500㎞、絶海の孤島といえるナウル島一島からなる国です。
バチカン市国やモナコ公国に程度の面積しかなく、人口は1万人程度です。
ポリネシア人とメラネシア人がナウル島の先住民で、かつては漁業と農業で生計を立てるというミクロネシアの伝統的な生活スタイルを送り、経済的には等しく貧しいながらも貧富の差もなく非常に温和な生活を送っていました。
しかし20世紀となり状況が一変します。
この島は絶海の孤島にあるサンゴ礁の島であり、アホウドリを始めとする海鳥の絶好の繁殖場所でした。
数百万年の間堆積した海鳥のフンの堆積によってできたリン鉱石の採掘と輸出が始まり同国に莫大な富をもたらしたのです。
この結果、ナウル国民は世界で最も高い生活水準を享受することになります。
税金は徴収されず、医療教育は完全無料、そして年金は老齢年金ではなく生まれた瞬間から政府が直接給与として支給するという手厚すぎる社会福祉を提供してもなお国にはお金が余るという状況になってしまいました。
最盛期の1980年代にはほぼすべての食料品と工業製品の調達はもちろん、政府職員を除くほぼすべての労働者も中国や近隣のミクロネシア諸国から来た出稼ぎ外国人に依存しており、また一本しかない島の周回道路には採掘権で富を得た者が持ち込んだ外国製(車を製造していないので当然ですが)の高級車がぐるぐる走り、食事も店を出した外国人のレストランで三食済ますといった生活だったそうです。
結果、この働かない全国民の深刻な不健康状態に陥り、糖尿病比率が3割を超えるという副作用ももたらしました。
こうした、単一の資源産業に依存し、国民は働く必要が全くない状態が長期間続いたことは同国に深刻な禍根を残すことになります。
20世紀末に鉱石が枯渇し、基本的インフラを維持するのでさえ困難な深刻な経済崩壊が発生したのです。
まさに世紀末の様相
まさに世紀末です。
You are shocked!(「北斗の拳」主題歌より)
電力不足や燃料不足、飲料水不足が深刻化し、以降は諸外国からの援助が主要な外貨獲得源となる文字通り最貧国となってしまいました。
1世紀近く働かずに収入を得ていたため、ほとんどの国民が勤労意欲以前に労働そのものを知らないという状況です。
政府は小学校の高学年以降、働き方を教える授業を行い将来の国を担う子供たちの労働意欲を与えようとしていますが、それまで鉱業だけに頼る産業構造だったためそもそも雇用能力のある民間企業が存在しません。
さらに、生まれたときから働いたことのない成人に関しては何の対策も施せない状況なのです。
もとの自給自足の伝統的生活による国民の平安が戻るのはいつでしょうか。
日本も太平洋に面した隣国として、ナウルに対しては少なくない援助をしています。
そんな崩壊したユートピア、ナウルには一度行ってみたいと思っています。
海外はほとんど行ったことのないですが輪廻転成諸行無常を感じる筆者のお話は以上です。
(平成29年2月2日 木曜日)