合同会社鈴木商店とは何なのか合名会社鈴木商店と対比しながらできる範囲でそのめんどくささを説明します(2021/04/17)
▼かつて、戦前日本にその名を刻んだ合名会社鈴木商店という大商社が日本にありました。三井三菱を凌駕し、瞬間ながら日本のトップに君臨した総合商社といわれる日本独自の業態を確立した歴史的会社です。この会社は、当主を失い引き継いだオーナーの鈴木よねが、大番頭金子直吉抜擢して大きく発展させました。鈴木よねは、金子の博才を買って少々の投機の失敗は意に介せずブルドーザー金子と呼ばれた辣腕に経営の全てを任せました。
▼もともと、鈴木家で行っていた合名会社鈴木商店の経営の全てを、自らが見出した番頭の金子直吉に任せてしまうという、所有と経営の分離という近代経営のはしりでもあったわけです。合議制で進む三井や組織力で地歩を固める三菱とは違い、オーナーに全権を任された有能無比の活動玉である、金子率いる鈴木商店の驀進が始まります。
▼三井1914年(大正3年)、第一次世界大戦が始まったとき、戦争はすぐに終結し戦争被害による影響で物価が下がるというのが大方の見方であったところ、鈴木商店は海外電報からの情報を駆使して戦況を集め物価は高騰すると読み、世界中で投機的な買い付けを行いました。鉄、小麦、船などについて日本を介さない三国間貿易を始めるなど独創的な手法で売り上げを急拡大します。
▼金子は「この戦乱を利用して大儲けをなし、三井、三菱を圧倒するか、あるいはその二つと並んで天下を三分すべし」と記しました。末恐ろしい商才とビジョンです。合名会社鈴木商店はその全盛期、売上16億円(当時の日本のGNPの約一割)に達し、三井物産や三菱商事(両者とも10億円程度)を遥かに上回ったのです。当時のスエズ運河を通過する船の一割は鈴木商店所有といわれたものです。台湾銀行との強力な関係を梃子に、ほぼ無尽蔵の資金供与を受けられる体制にあった鈴木商店は、第一次世界大戦での塹壕の土嚢も供与するなど世界中で羽振りを利かせ、この世の春を謳歌するに見えました。大体、今の感覚で言えば、「億円」を「兆円」に置き換えたら、その凄さが分かってもらえるものと思います。しかも、日本固有の市場ではなく、世界をまたにかけたまさに総合商社の先駆けであり、最強の陣容を誇っていたのです。
▼しかしながら、山高ければ谷深し。鈴木商店の絶頂は一瞬でした。第一次世界大戦後の反動で株価、工業製品価格、船舶運賃は軒並み下落します。株式を上場せずに銀行からの借り入れのみで運転資金をまかなっていた合名会社鈴木商店は大きな打撃を受け、折しも関東大震災で大量の焦げ付きも被りもともとの経営体力で優位に立つ三井三菱にその取引領域をますます侵食されていくことになります。ついに昭和恐慌のあおりで日本中の銀行に取り付け騒ぎが起こる中、後ろ盾であった台湾銀行という実質当局監督下の銀行も合名会社鈴木商店を見放し、実質的に急遽グループ傘下に収めてきた地方銀行では到底合名会社鈴木商店の巨体は支えられず、合名会社鈴木商店は事業停止、清算に追い込まれました。その後、合名会社鈴木商店の関連会社の殆どは当時の商売競合であった三井財閥系列に統合されていきましたが、唯一、金子の部下だった高畑誠一を中心に合名会社鈴木商店の本流だったグループ会社の日本商業会社を日商と改め再出発を図り、日商岩井、双日を経て今に至ります。
▼その他、合名会社鈴木商店の流れを組む会社は他にも神戸製鋼所、帝人、太平洋セメントなど沢山あります。今に続く三井三菱といった「財閥系」を瞬間でも凌駕し世界に雄飛した商売人の溢れ立つエネルギーを受け継ぐ企業群たちの存在に、栄光なき天才たちだった金子直吉を始めとした鈴木商店のスピリットに、日本人の底力を感じずにはいられません。
▼我々もどうせ投資や事業をやるなら、夢を乗せたいものです。合名会社鈴木商店に限りない憧憬と尊敬を込めて、合同会社鈴木商店と名付けさせていただきました。ここから合同会社鈴木商店の物語が始まります。先輩の合名会社鈴木商店に恥じないよう、後世の人達に恥じない仕事ぶりで世界に爪痕を残したいと念じております。
▼そもそも何で合同会社鈴木商店というのですか、という至極当然なご質問をいただいたので、口から泡を飛ばす勢いで合名会社鈴木商店と金子直吉およびそこに集った野武士たちのことを話したのですが、思い起こせばいつの時代にあっても自らの奉ずる信念に従い、事業にあっても学問にあっても宗教、イデオロギーにあっても、必ず成功させるという信仰を通じ、事業においては損をしても損をせず、破産しても破産したと思わず、死んでも死んだとは思わぬ不死身不死鳥、之こそ金子哲学であり、時代を超えて受け継がれるスピリットを植え付け爪痕を残したるは、日本の生み出した最大の実業家であり不世出の英雄といってよいでありましょう。
▼合同会社鈴木商店は、世界のあらゆるめんどくさいことにこだわり取り組む、世界一めんどくさい会社を目指しています。何に取り組むのかは当社の勝手、儲かるとか成長するとか課題解決とか社会的意義とか成長するとか世のため人のためになるとか、そういった価値観とは一線を画し、自らのこだわりと興味関心集中の赴くまま、熱量と行動力を併せ持つ世界一めんどくさい事業に踏み出します。手始めに毎日分量と熱量多めのこのような記事を配信しているので、このメルマガフォームに送信先メールアドレスをいただけましたら幸いです。ほぼ毎日午前0時に、分量多めのめんどくさい記事が届きます。
▼本当は、具体的などんな事業に取り組んでいるのですかというご質問に答えるはずの今日の記事で書くことも用意していたのですが、すでに設立の経緯と社名の由来、そして経営理念を語るところで本日の分量を使い切ってしまいましたので、続きは次回にさせていただきます。今一度、下記メルマガフォームへのメールアドレス登録、重ねてお願いいたします。