商法第1問

商法第1問 問題

(1) 運送業を営むAは、荷物を保管する倉庫を建てるための土地を購入するため、不動産仲介業者Bに物件を購入することを依頼した。Bは、甲土地がAの提示した条件に合致したため、甲土地の所有者であるCから甲土地を購入した。この際、Bは、Aのために甲土地を購入したが、このことをCに示さなかった。甲土地の購入後、引渡履行期から4年10か月が経過した後、Aは、Cを被告として上記契約に基づいて甲土地の引渡請求の訴えを提起し、その5か月後にBも、Cを被告として甲土地の引渡請求の訴えを提起し、両者の請求は併合審理されたとする。かかる場合において、CはA及びBの請求を拒むことができるか。なお、それぞれの主張が信義則(民法第1条第2項)に反するか否かは検討する必要がない。
(2) Dは映画館を開業しようと準備をしている者であるが、開業をするには1000万円が必要であった。そこで、Dは、Eに対して、「映画館の開業のために必要であるから、1000万円の融資をしてくれないか。」と頼んだところ、Eは、これを承諾し、Dに1000万円を融資した。その際に、Dの親であるFが保証人となった。Eからの1000万円の履行請求に対して、Fは、まずDに対して請求せよと主張することができるか。なお、E及びFは「商人」(商法第4条第1項)には当たらないものとする。

商法第1問 解答 2022年6月23日(木)沖縄戦終結の日

第1 小問⑴
1 AのCに対する請求
⑴ Cは、Aの引渡請求に対し、顕名がなく(民法99条1項)、Bの代理行為がAに帰属しない(民法100条本文)として請求を拒むことが考えられる。
⑵ まず、運送業を営むAが倉庫を建てるため不動産を購入する行為は商人がその営業をするためになす行為(商法502条4号、4条1項、503条1項)といえ、商行為の代理では、顕名なしに代理人の行為が直接本人に帰属する(504条本文)。よって、Bの代理行為はAに帰属し、CはAの請求を拒むことができないのが原則である。
⑶ 一方、CがBの代理意思を知らない場合、Cが知らないことにつき無過失であるときにはCとBの間で売買契約が成立し、その効果が帰属するのではないか問題となる(504条但書)。
⑷ この点、関係当事者間の多数の利益の合理的な調和を図るため、顕名なき代理行為は相手方と本人との間に法律関係が成立するが(504条本文)、相手方が代理人の代理意思につき善意無過失である場合には、相手絵型と代理人との間にも同一の法律関係が生じ、相手方はその選択により本人あるいは代理人との法律関係を主張できると解する。
⑸ 本問では、CがBの代理意思につき善意無過失の場合に限り、CはBとの法律関係を択一的に主張し、Aの請求を拒むことができる。
2 BのCに対する請求
⑴ Cは、Bの代理意思につき善意無過失である場合、Bとの法律関係を択一的に選択し、時効による権利の消滅(民法166条1項1号)を主張して引渡し請求を拒むことが考えられる。
⑵ この点、Bの請求は履行期から5年3か月が経過しており、債権者が権利を行使することを知ってから5年が経過していることから、時効が完成しているのではないか問題となる。本問では、履行期から4年10か月が経過した後に、AがCに対して引渡請求の訴えを提起している。確かに、善意無過失のCの選択以前には、両債権は併存しているともいえるが、本来これは一方が選択されれば他方はその主張ができなくなるものであり、債権の実態としては同一と解してよい。かかる債権の実質的同一性に鑑みるに、本人の請求については訴訟継続中においては、代理人固有の債権についても同様に催告に準じた時効の完成猶予の効力(民法150条1項)を認めるべきと解する。本件では、Aが4年10か月経過の時点でなした請求はBC館において催告に準じた時効完成猶予の効力を生じ、その後の訴えの提起により、Bの債権の消滅時効はその感性が確定的に猶予されたものである(民法147条1項1号)。よって、CはBの請求を拒むことができない。
第2 小問⑵
1 Fの主張は、催告の抗弁(民法452条)であるが、同行弁は連帯保証人には認められていない(民法454条)ため、Fが連帯保証人に当たるか問題となる。この点、債務が主たる債務者の行為によって生じたものであるとき、又は商行為がその保証にあたるとき(511条2項)には、連帯の特約がなくても連帯保証となる。本問では、E及びFは商人ではないため、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるか検討する。
2 Dが行う映画館の経営は、客の来集を目的とする場屋における取引として商行為にあたる(502条7号)。また、Dが権利義務の主体となり反復継続して営利を目的として事業活動を行うものといえ、Dが映画館の営業を開始した時点で商人にあたると解する(4条1項)。よって、Dが行う借入行為は、商人がその営業のためにする行為といえ、商行為にあたるのか、映画館の営業を開始する以前の行為であることから問題となる。
3 もっとも、商事取引における取引の安全を図るため、商人となった基準は客観的に明確であるべきであるが、行為者が営業開始にあたってそのために行った準備行為であることを告げ、それを知っていた相手方との関係では商人であることを認めるべきである。
4 確かに、本件貸付自体は単なる借入に過ぎず、これ自体のみで事業意思の外部客観性を認めることは難しいかもしれない。しかしながら、Dは本件借入の際、Eに対して映画館の開業のための事業資金である旨告げており、Eは、Dの映画館開業のための資金であることを認識していた。したがって、Dは商人であるといえ、本件は商人がその営業のためにする行為として商行為にあたる。その結果、Fは連帯保証人となる(511条2項)。
5 以上より、Fの催告の抗弁の主張は認められない。
以上(1,842文字)

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