民事訴訟法第16問

2022年10月4日(火)

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問題

甲は、乙に対し、すでに弁済期の到来している1000万円の貸金債権を有していると主張している。乙は、丙に対し、1000万円の売買代金債権を有しており、乙は、この債権以外には、みるべき資産を有しない。甲は、乙に代位し、丙を被告としてこの丙に対する売買代金債権の支払を求める訴えを提起した。
1 審理の結果、甲の乙に対する債権の成立が認められない場合、裁判所は、どのような判決をすべきか。
2 1の判決は、確定した場合、どのような効力を有するか。
3 乙は、甲の右の貸金債権の成立を争い、かつ、丙に対し、右の売買代金債権の支払を自ら請求したいと考えた場合、甲丙間の訴訟に当事者として参加することができるか。
(旧司法試験 平成4年度 第2問)

解答

第1 小問1について
1 甲の丙に対する訴訟は債権者代位訴訟(民法423条)であるところ、甲の乙に対する貸金債権(被保全債権)の存否は、当該訴訟において甲の当事者適格を基礎付けるという意味を有する。債権者代位訴訟に適法に着手することによって、債務者の権利に関する訴訟追行権を取得するからである。
2 そして、当事者適格とは、特定の請求について当事者として訴訟を追行し、本案判決を求めることができる資格をいい、訴訟要件の一つである。
したがって、これが認められない場合には、訴え却下判決(訴訟判決)をなすべきである。
第2 小問2について
1 上記のように、小間1の判決は、訴訟判決である。では、訴訟判決が確定した場合、どのような効力を有するか。具体的には、既判力が認められる「確定判決」(114条1項)に訴訟判決が含まれるかという間題である。
2 既判力は、当事者の手続保障の充足を根拠とし、紛争の蒸し返し防止のために必要とされるものである。そして、訴訟判決でも、当該訴訟要件の審理については手続保障が充足されており、また訴訟要件の存否についての紛争の蒸し返しを防止する必要もある。
3 よって、「確定判決」には訴訟判決も含まれると解すべきであり、同判決にも既判力は生じる。具体的には、判決基準時において、甲に当事者適格が認められないという点に既判力が生じると考える。
第3 小間3について
1 乙が、甲の貸金債権の成立を争い、かつ、丙に対し、売買代金債権 の支払を自ら請求したいと考えた場合、乙は、独立当事者参加(47条)の方法によって、当事者として参加することが考えられる。
2 もっとも、両訴訟とも、この丙に対する売買代金債権を訴訟物とするから、二重の禁止(142条)に触れるおそれがある。
この点について、142条の趣旨は、既判力の抵触回避、相手方の応訴の煩の回避、訴訟経済を図る、という3点にある。そして、これらの趣旨を実現するためには、「事件」の同一性は、①当事者の同一性、及び②訴訟物たる権利関係の同一性、の2点から判断するのが妥当と考える。上記のように、②訴訟物は同一である。 しかし、①当事者は、甲と乙で異なる。また、二重起所の禁止の趣旨に照らして考えてみても、独立当事者参加訴訟の場合、弁論が併合され合一確定が保障されるから(47条4項)、問題が生じない。したがって、二重起訴の禁止に当たらない。
3 そうだとしても、独立当事者参加の要件を満たさなければならないのは当然である。独立当事者参加の方法は、権利主張参加(47条1項後段)と許害防止参加(47条1項前段)の2つがあるが、後者は、「訴訟の結果によって権利が害されることを主張」しなければならない。これは、条文の文言からして、参加前の当事者が割れ合いなど、詐害的的な訴訟追行を行っている場合を指すと解すべきである。そのため、そのような事情が認められない限り、詐害防止参加をすることはできない。 そこで、権利主張参加の方法によることが考えられる。権利主張参加の要件は、「訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張」することである。これは、参加人の請求が本訴請求と法律上両立し得ない関係にあることを意味する。
本問では、本訴請求の訴訟物は、乙の丙に対する売買代金債権であるから、訴訟物レベルでの非両立関係は認め難い。また、実体法上の管理処分権が甲と乙の両者に帰属することはあり得るため(民法423条の5前段)、当事者適格レベルでの非両立関係も認められない。
したがって、この要件も満たされない。
4 以上から、結局乙は独立当事者参加の方法によって当事者として参加することができない。
以上

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