(2019/11/14)ソフトバンクが傘下のヤフーを通じてLINEを買収するという観測記事が出たことを受けての日本のQRコード決済業界を三国志風に論じた雑感となります

劉備玄徳(三国志演義より)

おはようございます。

2019年11月の日本経済に関する観測配信記事です。

歴史調に書いてみます。

2019年11月の今を振り返ること1年くらい前から、日本市場では、キャッシュレス社会の到来ということで、フェリカ端末といった「機器設置費用」に当たる設備投資費用がそんなにかからず中小販売業者や中小零細食品店や外食産業のお店においても、QRコードという「紙」を置いておくだけで客のほうからスキャンカメラアプリでかざして金額を入力する、「スキャン入力」というキャッシュレス決済が本格化し、何とかペイというQRコード決済仕様が乱立し、何パーセント実質還元といったセールを打ちながら戦国時代の様相を呈しておりました。

そうして、その決定的な物量広告作戦、販売促進活動費用をかけたおかげで、どうやら一歩リードし始めたらしいソフトバンク(SOFTBANK:やわらか銀行)グループのPayPayが、おそらく(筆者の想像では)日本のQRコード決済全体の6割弱を握る、いわば中国古代の三国志になぞらえれば、事実上の0代目皇帝曹操により打ち立てられた、魏志倭人伝でも有名な「魏」の国のような存在になってきた模様です。

その次に、孤高のポジションで追撃する、いわば「呉」の立場にあるのは、韓国資本で日本でのSNS市場に食い込み続けてきているLINEグループで、このLINEという、スマホでのコミュニケーションに特化し続けて日本市場に一定の地位を得たSNSアプリから展開するLINEPayがあります。

LINEPayの市場シェアは、大体3割弱、というところでしょうから、まさに三国志で言えば「呉」の立場にそっくりです(少なくとも筆者目線では)。

最後に、三国志演義において非常に重要なファクターである、「蜀漢」でありますが、実は歴史上に存在した、後漢の正当なる血統後継者を「自称」する劉備玄徳が四川省成都で打ち立てた正式国名「漢」、通称「蜀」という国ですが、これは、稀代の軍略家であり戦略家であるところの諸葛亮孔明が、「天下は複数あってよい」というコペルニクス的転回の発想により、魏の曹丕(曹操の子)が帝位を漢王朝から簒奪して魏の皇帝を称したところの対抗策として、劉備をして後漢の正当な後継者として(国の実力はとりあえず度外視して)皇帝の地位に就かせることで対抗しようとしたものです。

その流れの中、「あの蜀でも帝位かよ」と判断した呉の孫権も、帝位につき、結果、3つの「帝国」が並び立つ、三国志の時代が成立するというわけです。

しかしながら、面白いことに、その力関係では(これも筆者の勝手な解釈ですが)6対3対1、という魏呉蜀の関係であったところ、一番優位だった魏が、ようやく最弱の蜀を滅ぼしてほっとしたのもつかの間、魏の宰相の地位にあった司馬氏によって国自体が「乗っ取られ」てしまい、晋という国に代わり、そうして晋が呉を併呑して、三国志時代はあっけなく終わるということになるわけです。

さて、2019年11月の日本経済市場に目を移しますと、PayPayで市場シェアの6割を握りつつあるソフトバンクがLINEを「買収する」という話が出てきています。

業界3位のメルカリ(メルペイ)としては、そもそもこうやって強者が統合してしまい相手が市場の9割近くのシェアを握るとなると生きていけなくなるので、その前に、諸葛亮孔明並みの軍師や戦略家が出てきて、早い段階でソフトバンクのPayPayと全面戦争を仕掛けておくべきでした。

その上で、レッドクリフ(赤壁の戦い)よろしく、蜀と呉が連合して魏に当たる、そうやって三国鼎立状態をわずかでも現出させ、最強国魏を足止めしつつ、「漢」の後継国家であるという「血筋」「毛並みの良さ」をもって南国(田舎)の呉(LINEは外資の韓国企業)をたらしこみながら、その状態をしばらく続けることで次の展開をはかる、という戦略が純国内企業のメルカリにとって最善の方策だったと思うのですが、どうもフリマアプリのメルカリ事業の収益化を優先したあまり、メルペイについては起死回生の戦いをソフトバンクに仕掛けられないまま、このまま押し切られてしまいそうです。

時代の流れというものは非常に残酷なものであり、チャンスは一回しかめぐってこないし後でああやっておけばよかったと後悔しても遅いです。

一瞬一瞬が勝負ということでしょう。

残念ながら、メルカリが孤塁を守ろうとしている国内フリマアプリ市場においても、資金力で10倍のソフトバンクが、自前のフリマアプリで本格的に乗り込んでくるか、または買収を仕掛けてくるでしょう。

少し考えれば、総人口1億人強の日本市場で、細かく争っていても、世界人口75億人の過半を握る(中国を除く)GAFAM(グーグルアマゾンフェイスブックアップルマイクロソフト)と呼ばれる世界の巨大プラットフォーマーに勝てるわけはないので、そろそろ、日本国内市場での「予選」に残された時間などはあまりない、とも言えそうです。

その、国内では最強を誇るソフトバンクグループも、不動産賃貸業にしか過ぎないのではなかったのかという世界資本市場の疑問に答えられなかったWeWorkへの巨額(割高)投資に手を焼いており、決して状況は良くないわけであり、もともと旗色が悪い百家騒乱の日本市場、漢書地理志にいう、「夫れ楽浪海中に倭人有り。分れて百余国と為る。歳時を以て来り献見すと云ふ。」といった状況から一応の統一政権ができるまで数百年がかかったことを考えれば、なかなか世界の強豪たちに力を合わせて伍していく体制を作るのは難しいのかもしれません。

現在の状況をまとめますと、ソフトバンクのPayPayとLINEのLinePayが統合されるということは、魏と呉が一緒になって蜀に攻めてくるという感じです。

市場シェア10%の蜀(メルペイ)としては、6割の魏と3割の呉をうまく仲たがいさせてそのうちに地歩を固めないといけなかったわけですが、残念ながらメルカリに諸葛亮孔明並みの軍略を仕込んでおく時間がなかった、といえそうです。

以上、ソフトバンクもLINEもメルカリもすべて上場企業であり、その公開資料を用いて筆者の責任で勝手な論を展開しました。

いちおう、「公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員」、及び「国際公認投資アナリスト(CIIA)」というれっきとした投資アナリストの「資格」は保有しております筆者からの素人薄口経済解説は以上です。

(2019年11月14日 木曜日)

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(2019/07/11)Felica決済(要するにSuica決済)か何とかPAY(QRコード決済)かという陣取り合戦が始まった日本の決済現場の話