なぜホモ・サピエンスだけがホモ属戦国時代を生き抜いて単一の人類になったのかという話をしたいと思います(2021/04/06)

▼おはようございます。人間っていいますけど、その歴史は実はわからないことだらけです。有史の人類史においてもよくわからないところ、いつもやっている人類史よりはるかさかのぼって、そもそも人類ってどうやって生まれたんだっけというような話から始めてみたいと思います。そもそも人間を人間たらしめている一番の構成要素は何かという根本的な疑問が、ここ20年くらいの人類史学の発展で、だいぶわかってきたのでちょいちょい共有しながら(思い出しながら)書きます。

▼これまでの人類史学では、いわゆる、あの小さい頃にみなが観たことがある局部を隠した絵の古い人類(アウストラロピテクス、600万年前)から、猿人くらいから旧人、新人と一直線に人類は「発展」して、そして、ミッシングリンクと言われる「わかっていない」都合の良い暗黒時代を経ていきなりホモ・サピエンス、いわゆる現生人類、我々の一族というかご先祖様が出た、というような「教え方」をしていたわけですが、もはやこうした「常識」は全く正しくない単なる「お話、それまでの説」であることがわかってきたのです。

▼すなわち、いろいろな人類が順繰りに発生して「発展」しながら最後にわれわれのご先祖であるところのホモ・サピエンスがゴジラ最終形態的に出てきたわけではなくて、同時多発的に、たくさんの、ホモ属、いわゆる広い意味での人類の種類が、世界の主なところでぼこぼこ生まれて、そうして、その中でも能力的体つき的な相対的席次としては、どう贔屓目に見ても、中の下、中堅どころ、偏差値40くらい?だったホモ・サピエンスという我々の直接のご先祖様「だけ」が、どういうことか一気に20万年くらいから大増殖をはじめ、アフリカ大陸を瞬く間に電撃的に席巻し、そうしてアフリカ大陸を出て(出アフリカ)、そして数万年のうちに南極大陸を除く世界中に広がった、というのが今の通説になっているのです。

▼そして、この我々のご先祖であるホモ・サピエンスの集団が世界中に広がるさまを、グレートジャーニーと呼ぶいう話を聞いたことがある方もおられるかもしれませんが、このイメージは、ドラゴンクエストのパーティーの「旅」といった牧歌的なものでは決してなくて、ホモ・サピエンスと呼ばれることになる我々の直接の先祖である現生人類たちが行くところ、その先々には、別のホモ属、すなわち広い意味での人類もそこら中にいたわけで、そうして、なぜか、ホモ・サピエンスが上陸、侵入すると、数千年くらいの単位で絶滅、忽然と歴史から姿を消してしまう、という状況のようだったそうなのです。もちろん、ホモ・サピエンスとこれらの絶滅した人類との間に、直接の交戦というか戦いが行われたという確たる証拠はありませんが、明らかに、入植したホモ・サピエンスが、先にそこにいた「人類」たちの居住世界を狭め、奪っていったということは状況証拠的に明らかでありましょう。そんな終末感というか原罪感が我々の歴史にはビルトインされているのです。

▼そんな現生人類の最大ライバルであったのは、西のヨーロッパではネアンデルタール人、東のアジアではジャワ原人と呼ばれていたホモ・エレクトスでありまして、彼らもかなりのシマを張って有力な勢力を保っておりましたが、後述する「虚構の認知の力」という悪魔の思想能力を獲得し、それによる社会性(同調圧力)で塗り固められた我々の祖先であるホモ・サピエンスの侵入により、彼らの居住域は根こそぎ奪われ、たった数千年かそこらで、人類はホモ・サピエンスのみが残るという、世界中での人類の大虐殺、ホロコーストが起こってしまったというのが今の通説になりつつあります。

▼ではどうして、ホモ・サピエンスだけが、この多種人類世界を自らのみに「統一」することができたのか、その前に、このことがいかに異常で稀有なことかを説明しておこうと思います。これがどれだけ凄いかというのを、たとえ話で述べますと、我々が「犬」という場合、チワワからゴールデンレトリバー、トイプードルからダックスフント、柴犬やコリー、銀牙ー流れ星銀の熊犬、まで、いろいろな犬種を思い浮かべると思います。かつての「人間」という世界もそうだっただけなのです。しかし、たった一つの、多数の人類種族うちの一つであった「ホモ・サピエンス」という種族だけが、他を滅ぼした結果、人類=ホモ・サピエンスという認識が、この地球上を支配しています。犬の世界で言えば、セントバーナードのように大きくも粘り強くもなく、ドーベルマンのように獰猛で戦闘力が高いわけでもない、熊犬のように群れを統率するカリスマもない、なんとなくどこをとっても犬の業界の中では平均的な「柴犬?」レベルの偏差値40のホモ・サピエンスが、どうして他を席巻したのでしょうか。

▼その鍵が、ホモ・サピエンスの脳だけに残った「認知革命」であると、「サピエンス全史」という本の著者が指摘しています。ホモ・サピエンスに限らず、多種多様に出現していたホモ属のみなさんは、等しく頭(脳味噌)が体に比して異常に大きく、直立歩行して、手を用い道具を作り、そうして社会性を身につけ加えて「火」という力を持っていました。特に火を使って調理することにより、消化を助けた(栄養を取り込むための内臓や腸の運動に時間を割く必要がなくなった)ことは、ホモ属のみなさんの対外進出の時間を取ることに大いにつながり、これにより火の発見は人類発展の大きな出来事であったと言われておりますが、火は、別にホモ・サピエンスだけが使い始めたわけではなく、ホモ属が等しく使っていた形跡があるのです。よく言われる北京原人(こちらもホモ・の一種だと思われます)の火を使った跡の遺跡などが有名です。

▼火の利用に加えて、ホモ属のホモ・サピエンスだけに起こった変化(トランスフォーム)が、脳に直接作用する変化であり、我々の脳は、ある時点でいきなり突然、「噂話」や「虚構の認知」と言われる脳内革命を行ってしまったことで、物理的な脳の大きさで集団としてなんとか維持できる150人(ダンバー数(ダンバーすう、英: Dunbar’s number)とも言われる、人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限)という集団をはるかに超える集合体=極多数による「社会」を作ることができるようになった、というのです。これは、単に言葉を使えるといった能力の話ではありません。そうではなくて、自らが所属する対象や生きるよすがとして「認知」する上位概念、例えば宗教とか国家とか通貨貨幣とか、法律とかあの世とか名誉とか死後の世界とか人類全体の歴史とか祖先とか子孫とか、そういった「〜であるという建前にする」という虚構の認知が進んだ結果、150人を超えると分裂して統一した意思を持って行動することができなかった集団認知の壁を、易々と乗り越えて、数百数千数万の人間を、同じ「虚構」「建前」のもとに、その各人の能力を最大限発揮させることができるという各人の脳の仕組みが備わった、というのが最もホモ・サピエンスを今の繁栄(75憶人!)に導いた大いなる力だというのです。

▼ですから、我々は噂話は大好きで、オカルトで、承認要求に塗れて(まみれて)安心を得ようともがくのです。個体レベルではいくら滑稽な「虚構」「建前」の信心であっても、これが数百数千数万の人間が信じているという状態は立派な、不可逆的な「社会運動」となり、その数の暴力は、たかだか100人程度の小集団の存在など、軽く飲み込んでしまうようなことであったでしょう。絶対に客観的には説明に無理がある、新約聖書というものに基づくローマ・カトリックという宗教も、今となっては世界中の11億人が自ら進んで積極的に「認知」しているゆえに、厳然とした力を持つわけですし、かつてロシアのモスクワで始まった共産主義革命という単なる民衆に対する暴力じゃね?と客観的には思われる各種の運動や思想も、一時は当時の世界の半分を占め、10億人単位の「人民」が信じた「虚構(虚構というと失礼なら構図、お約束ごと、建前)」であったわけです。今の世の中では、「人工知能」とか「シンギュラリティ」といった「概念」がそれにあたるでしょう。スマホを通じて見るSNSのせいで、それまでの既存の宗教の信者が減ったという統計研究結果もあるようです。アメリカを筆頭とする資本主義自由主義経済国家も、別に自由にしていること自体がすごいわけでもなんでもなく、自由平等人権思想という、1779年フランス革命という、自国の王様と王妃様の首を文字通りギロチンという最悪の処刑具で切り飛ばす、という残酷なセレモニーを経て生まれた「お約束ごと」「建前」にすぎませんし、アメリカが中国に対して人権がどうの、とのたまうのは、これも自国のお約束ごとの押し付けに過ぎないとも言えるのです。北朝鮮という「国家」が、王政を否定する究極の共和制たる社会主義を標榜しながら、なぜか3代にもわたって同じ「血族」が最高指導者の地位(国家主席といったり総書記といったり第一書記と言ったりしますが、要するに軍事政治の最高位という意味では同じ)に「世襲」されるのか、論理的に考えてそれでいいのかということは、それはかの国の「人民集団」がそれで良いと建前上考えているからに他なりません。

▼我が国日本も、2,000年以上連綿と続く天皇家を戴く国家、という歴史という「お約束ごと」により、これにより日本人は個々が持っている猿の子孫である運動能力や思索能力をはるかに超越した集団としての力を持ったわけです。でなければ、はるか80年前、長駆数千キロメートルの波濤を超えて、無電封鎖の中、米国太平洋艦隊の本拠地であるハワイオアフ島真珠湾(パールハーバー)を、航空機数百機を搭載した最新鋭航空母艦6隻による機動部隊による航空奇襲攻撃して撃滅する、というような世界の人類も驚く「離れ業」を演じることなどできません。

▼虚構や建前というのが失礼ならば神話と書けば良いかもしれませんが、このように、脳の認知革命を経た現生人類は、こうしたお約束ごとの力で、集団としての力を一致団結させ、ものすごいプロジェクトを作り上げることができるようになります。ピラミッドの建設、バビロンの塔建設、ローマの水道橋、日本の吉野ヶ里遺跡や三内丸山遺跡など、巨大な構造物の遺跡に残るのは、構造物そのものの凄さではなく、こうしたすごいものを作り上げるだけのイメージ、妄想を膨らますことができる能力を猿の末裔である脳髄に身につけた、という認知革命の力が大きいのです。ということで、我々は、噂話が大好きで、客観的に事実でなくても社会科学的にそうあれば便利だという概念を駆使して動き回り、神話を信じて時にはトイレットペーパーを買いだめしてしまうというような可笑しな(おかしな)行動を取る種族となったというわけです。

▼そして最後に怖い話を付け加えますと、おそらく、我々の祖先のホモ・サピエンスの中でも、ほんの一部に芽生えたこの認知革命獲得組=ニュータイプの中二病の一族だけが、おそらく増え続け、他のホモ・サピエンスを圧倒し、そして滅ぼしたのであろうと考えております。つまり、ホモ属の中でも、ただの中の下だったホモ・サピエンスの中に生まれた、おそらくこの「目覚めた」ニュータイプの中二病の一族だけが残ったものと考えられます。意欲的な説でありお話でありましたがいかがでしたでしょうか。自らのことをよく知っておけば、これからの自らの処し方についても知見が生まれるであろうと思います。そのための、教育であり、研修であり、自己啓発であり趣味であろうと思います。それでは、本日の記事は以上です。また明日お会いいたしましょう。

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