ユダヤ人に学ぶ経済行動について(金貸しは悪ではない)(2021/05/03)
▼先日、儲けることは善の行いである、ということが割と最近、人間社会の常識になったので、世界人類は経済的に発展したという話をしましたが、今日はその続きをもう少し深堀りして書いてみます。そもそも、人類が共同体を形成して生存をはかる上で、生産力の増大は人口増加による時代の要請として必要とされてきましたが、実は、共同体の構成員が個々に儲けを求めて経済活動をおおっぴらにやって良い、ということは原始的な共同体、例えばキリスト教徒の保守本流、カトリックにおいては積極的に禁止されていたのです。この経済活動は悪という「常識」は、こちら2000年以上、独自のノリと芸風で過ごして今日にいたり、時代の節目節目で世界に強烈なメッセージや爪痕を残し続けている我々日本人からすれば、相当縁遠い世界観ではありますが、むしろ「儲けてはいけない」宗教的縛りにほとんどの世界人類は置かれていた、ということを知っていて損はありません。
▼とは言え、必要な状況で人モノカネを融通してくれる便利屋を社会は求めますから、そこに、故郷を追われたユダヤ人は、独自の宗教観(共同体の維持)を維持して、共同体維持のために、個々人が、良き経済主体として、知性と教養を高めて経済活動で大を為す、具体的には貸金業や両替商、交易、流通などの分野で、まさに他者が必要な状況で人モノカネを融通してくれる主体を演じたのです。キリスト教徒においては、経済活動全般、特に金を貸し利子を取ることは罪悪であるところ、ユダヤ教徒はユダヤ教徒の共同体を維持するために「ユダヤ教徒でないものからは利子を取っても良い」とされていたのです。ここが、故郷を追われ、差別されてきたユダヤ教徒が自らの共同体を守るために編み出した知恵なのです。ユダヤ教徒同士、同胞に対しては、貸しても利子を取ってはならない、というのにもこれは表れています。
▼時代はいったん勢いがつくと、良い悪いにかかわらず慣性がついてその方向に向かい始めます。やがて、キリスト教会は、キリスト教徒の金融業自体を禁止して、金融などという卑しい(神の道に遠い)商売は、卑しいユダヤ人にさせるとむしろユダヤ人に(下賤な)金融業を要求します。そして、ユダヤ人には、職業や土地所有の制限に加え、その上キリスト教徒よりも高い税金を要求されるという立場に追いやられたのです。キリスト教徒は、キリスト教の教えを、国家権力(経済活動は必ずしも得意ではない、武士の商売)と結合させることにより、その大きな権力と統治の庇護の下で、自らの安寧を求めたともいえます。
▼こうして、ユダヤ教を奉じるユダヤ人は、自分たちの共同体を維持して生き残りをはかるために、トーラーというユダヤ教の聖典、及びタルムードというユダヤ人の生活規範の全てを大切に守り、知識を高めて奢侈に流れず、禁欲に過ごして経済活動に邁進していく、そのように教育されて今日に至るのです。キリスト教徒の教えでは、「富んでいる者が神の国に入るよりは、ラクダが針の穴を通るほうがよっぽどたやすい」というように、商売やその結果としての富に対する否定的な考え方が染み付いていますが、同じ聖書を経典とする一神教でありながら、ユダヤ教はその真逆を行くまったく別の思想なのです。金の亡者と言われようが、頭を使って身体を使って経済活動に勤しんで成果を上げる、この考え方がビルトインされ教育されつづけているユダヤ人の考え方は、一つ学ぶべき点があるでしょう。
▼故郷を追われ、世界中にばらまかれた(ディアスポラ、という)ユダヤ人とはまた別の意味で特異ななりたちの、世界の最果ての海に囲まれた列島に、手先の器用で不思議な民族がいました。この民族は、世界で最も精緻な磨製石器を作ったりと、すでに当時の世界でも驚きの変な民族でしたが、この民族が、時代の節目節目に世界史上に表れるのです。世界史的にいいますと、当時中華最大の勢力であった魏国から「親魏倭王」といった称号と銅鏡数百枚をもらって同盟したり、当時世界最大の帝国であった唐帝国と朝鮮半島でガチで海戦したり、世界歴史史上最悪の大規模海賊である倭寇を生みだしたり、種子島に流れ着いたポルトガル人が持っていたたった1丁の火縄銃から、それを完コピして大阪の堺あたりで大規模生産を始めてあっという間に世界最大の鉄砲生産国になってしまったり、清国、ロシア帝国に戦争して勝ってしまったり、さらに80年前にはハワイオアフ島真珠湾に当時世界最強の海軍国であるアメリカ合衆国太平洋艦隊の根拠地を航空母艦に400機の艦載機を載せて運んで空爆したり、戦後の焼け野が原の中からわずか30年でGDP世界一に上り詰めたり、それはそれは変な振る舞いをする日本という国とその民族があるわけです。この日本人の振る舞いとユダヤ人の活動を対比させて研究する人もいます。
▼日本人がなぜこれだけやらかす芸風を持っているのか、それは今の日本人であるところの筆者にも実はもよく分かっておりません。カネを最上位においているわけでもなさそうですし、権力に最大の敬意を払っているわけでもありません。しいていえば、その場のノリとまわりの評判、そして自分自身のやりたいことに忠実に生きてつきつめてきた純粋なその生態が、これだけの世界史的に面白い歴史的偉業をなさしめているのかもしれません。今日だけがんばる、というその都度精神とでもいいましょうか。
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さすが日本刀のマルテンサイトの研究者。
ダイセルのイノベーションパーク(兵庫県姫路市)の久保田邦親博士(工学)の材料物理数学再武装って人工知能と品質工学のあいの子みたいで面白いよ。非線形関数の造形法として「関数なんて繋げてしまえ(正式には関数接合論)」理論でいろんな化学現象の関数の作り方を教えている。もちろん神の見えざる手で有名な古典派経済学の祖アダムスミスのお話もSNSでやっていた。要約すると全体最適のトレードオフを数学的に表現するにはという今日の経営組織学の根本を示していると思われる。