大手メディアの自己矛盾について
一見いい老舗企業の紹介という体裁の記事ですが
大手メディアに限らず、メディアというものは一定の意図を持って記事を発信し、できるだけ多くの人の興味関心を引こうとします。しかしながら、影響力が大きい(と自ら思い込んでいる)大手メディアになるほど、内輪の論理で肝心なところが検討されないまま記事や情報を発出してしまうことがよくあります。
ここで紹介した記事は、一見いい老舗企業の紹介という体裁の記事であり、東京の下町で125年の社歴を誇る、飛び込み営業ではなくて顧客からの紹介を主な営業手段として営々と続いている保険代理店を有料記事で紹介しようという導入の無料記事部分です。
一見、問題ないように見えるこの記事ですが、飛び込み営業ではなくて顧客からの紹介を主な営業手段としたいい社風という会社を説明するのに、自己都合退職者が3名しかいない、というセンセーショナルな見出しを付けて記事を構成しようとしています。
もちろん、従業員の定着率が高いことはいい企業の重要な構成要素ではあると思います。しかしながら、こうした「検証不可能」「企業の発表どおりに書くしかない」事象を何の検討もなくそのまま記事にするのは大本営発表を大きく批判している歴史ある大手マスメディアにとって大いに自己矛盾であると思います。
歴代退職した一人ひとりに、裏とりの取材でもして、そして検証しているのであれば別段ですが、会社側のコメントをそのまま乗せるのでは広告の域を出ないでしょう。
自己都合で退社した男性社員はわずか3名のみー。
さらに、検証不可能な自己都合退社の「少なさ」ですが、さらに自己都合で退社した男性社員はわずか3名のみー。と、題名とは違う「男性社員」という言葉で定義しています。記事の標題には、「男性社員」といった限定はついておらず、単に自己都合退社は53年で3人、という記載であり、これは重大な改変です。
すなわち、いわゆる昭和生まれ時代までの「女性社員」は、結婚退職するのが通常であった、それは間違いなく自己都合退職であり、これをカウントしてしまうとこの生地自体が成り立たなくなる、というまともな検討がこの大手メディアの中でなされず、適当に本文で「男性社員」といった限定を付して逃げに入っているのがミエミエなのです。
昭和生まれ時代まで、女性社員が結婚退職するのが常識だったのは歴史的事実です。そんなことはなかったとは言わせません。筆者も昭和後半生まれの立派なおっさんですが、入った銀行の指導担当は、筆者の隣の席で業務時間中タバコを吹かしていました。JRとして民営化される前の国鉄の電車では、車内に灰皿が常置されており、ほとんどの客が車内で余裕でタバコを吸っていました。そんな時代だったことを忘れて、時代に蓋をするような姑息な真似はやめたらどうでしょうか。
現代の価値観で、すべての過去を引き直して断罪しようとする、もしくは無視してなかったことにしようとする、そのような態度はさもしく卑しいものです。
全く、尊重~とか多様性~とか言っているその口に、突っ込んでやりたいものです。
よく見ると、冒頭のこの記事を書いているのが、女性記者であることを見るにつけ、このあたりの闇の深さを感じます。
物事を衡平に見る視座を養うというのは、大変むずかしいものですが、歴史を勉強することはとてもよい訓練になると思います。
一緒に歴史を勉強しましょう。朝の読書会で。。
以上