「ん」の謎

「ん」ってどこから来たのか

変体仮名ってありますよね。たとえば「あ」は安心の安から来ているけれども、「阿」をくずした文字で平仮名にしちゃった文字も、ちょっと昔までは普通に使われていました。しかし、変体仮名でも今の五十音でも、やっぱりもとになった漢字という文字があるんですけど、「ん」だけはそれにあたるものがなくて長らく謎でした。

空海がインドの仏典から学んだ「吽」がヒントに

ということで、いつ、誰が「ん」を生み出したのだろう?調査の結果、この歴史的大発明に関わったのが、真言宗を打ち立てた空海さんです。筆者独自の日本偉人ランキング堂々1位の空海さん、やっぱりやってくれました。留学先の中国語にも「ン」だけを表す文字はなかったが、804年に遣唐使として中国に渡った空海は、インドのサンスクリット語で書かれたオリジナルの仏典を学び、「ン」を書き表せる文字を持ち帰ります。それが阿吽の呼吸の「吽」であります。ただし、これは世界が「阿」で始まり「吽」で終わるという思想を表そうとしたもので、空海も「ン」と書こうとしても「ニ」としか書けなかったといいます。阿吽の呼吸の阿については、「あ」の変体仮名としてかなり長く君臨します。やっぱり、当時の最先端のトレンドだった仏教ってすげーっていうことですね。

インドから伝わった仏教を通して生まれた「ん」は、平安時代から江戸時代にかけて庶民の間でも広まったようです。江戸時代には本居宣長や上田秋成らによって盛んに研究され、さらに明治以降も研究者たちによる日本語研究の結果、現在のところカタカナの「ン」が現存する最古の例が1058年の『法華経』、ひらがな「ん」の初出は1120年の『古今和歌集』といわれています。

今では当たり前のように表記し、発音している「ん」。「ん」は長くて深い歴史を持つが、まだまだ底知れないものがあるのです。そもそも日本語には「ん」で始まる言葉なんてほとんどないし、しりとりでは「ん」は嫌われものです。だが、私たちは「ん」をもっと畏敬し、崇拝し、尊重すべきなのかもしれません。

そう、漫画の連載がピンチのときに救世主のようにやってくる、あの能力全開の転校生のように…。

あ、変体仮名は知っているけどあんまり変態ではない、そこそこ変態のわたしからは以上です。