契約締結前の過失
(補足)現在の外務大臣レベルさんまで、存じている国際的案件ならば、このタイミングで謝絶してきた国内銀行に対しては契約締結前の過失として債務不履行を追求できる事案だと考えます。
契約締結上の過失とは、契約締結の段階またはその準備段階における契約締結を目指す一方当事者の過失のことで、契約内容に関する重要な事項について調査・告知しなかったり、相手方の合理的期待を裏切るような行為をすることにより、契約締結後、あるいは契約不成立により不測の損害を被った相手方を救済するための法理論をいいます。
この契約締結上の過失について、最判昭和59年9月18日は、「取引を開始し契約準備段階に入ったものは、一般市民間における関係とは異なり、信義則の支配する緊密な関係に立つのであるから、のちに契約が締結されたか否かを問わず、相互に相手方の人格、財産を害しない信義則上の義務を負うものというべきで、これに違反して相手方に損害を及ぼしたときは、契約締結に至らない場合でも契約責任としての損害賠償義務を認めるのが相当である」と述べて、契約責任を追及しうることを認めました。
そして、平成19年2月27日には最高裁で新しい判決が出ました。
Xの開発・製造したゲーム機を順次Y、Aに販売する旨の契約が締結に至らなかった事案で、YがXに対して契約が確実に締結されるとの過大な期待を抱かせる行為をしたこと等の事情から、YはXに対する契約準備段階における信義則上の注意義務に違反したとされました。
具体的には、Aからゲーム機の開発業者の手配を依頼されていたYが、Aから商品の具体的な発注を受けていないにもかかわらず、YがXとの間の契約当事者になることを前提として、商品の正式発注を口頭で約束したり、発注書、条件提示書を送付するなどの行為を繰り返したことにより、Xが契約締結に強い期待を抱き商品の開発製造をしたという事案でした。
この事案について裁判所は、YはAが商品の買受を承諾しないのに契約を成立させるわけにいかない立場にあったとしても、Yの行為によりXに過大な期待を抱かせ開発製造させたことは否定できず、YはこれによりXに生じた損害を賠償すべき責任があるとしました。