ますます生きにくい世の中になってきているなと感じた話をします(もと吉本興業所属の芸人宮迫さん謝罪会見を読み返して)(2019/07/20)
おはようございます。
令和元年、2019年7月のできるだけ自由な表現や発言を行うようにしたいと考えている筆者からの意見です。
宮迫博之氏(みやさこひろゆき、本名同じ、1970年3月31日生まれの吉本興業ホールディングス株式会社傘下のよしもとクリエイティブ・エージェンシー(今後は通称の吉本興業で通します)に直近まで所属していたお笑い芸人で直近契約解除)は、日本のお笑いタレント、司会者、俳優、声優で、お笑いコンビ・雨上がり決死隊のボケ担当でコンビの相方は蛍原徹、というプロフィールの方が、反社会的勢力の会合に会社に無断で個人で「出演」し報酬をもらっていた、といういわゆる「闇営業」問題での(会社は契約解除しているのであくまで会社を通さない単独)謝罪会見に臨みました。
吉本興業の歴史は古く、明治末期の創業以来100年以上にわたり、古くは初代桂春団治、横山エンタツ・花菱アチャコ、柳家金語楼から、現在の明石家さんま、ダウンタウン、ナインティナイン、ロンドンブーツ1号2号らに至るまで、東西の多くの人気芸人を輩出してきたお笑い界・演芸界の名門です。
テレビ番組制作、劇場、芸人養成スクールを手がけ、お笑い芸人のマネジメントでは圧倒的強さを誇り、傘下芸人は実に6,000人を超えるといいます。
戦前は、巨人軍を読売新聞と共同で設立して草創期のプロ野球界を支え、戦後は日本プロレス協会を立ち上げて力道山をスターにし、近年はスポーツ選手のマネジメントを数多く手がけるなど、スポーツ界とのつながりも深い、日本の総合エンターテイメント会社として、最近は海外(特に中国)への進出意欲も旺盛です。
さてそのような契約芸人6,000人を抱える巨大なお笑い殿堂。吉本興業の中の、有名芸人である宮迫さんの契約解除を受けて、宮迫さんとロンドンブーツ1号2号のツッコミ担当である田村亮(こちらは契約継続中ということですので「さん」はつけずに所属芸人として呼び捨てで扱います)とが、独断で会社を通さない会見に臨みました。
会見を見て、さらに全文書き起こしの記事も読み返し、筆者が得た印象としては、ひたすらに、まっすぐに、それはもう「生きにくい世の中になったものだなあ」というものでした。
辛い会見でした。
これでは、何らかの組織や会社や企業に所属している人間は、そのプライベートにおけるほとんどの「自由な」活動に対して思い切り制約になるなと感じたのです。
反社会的勢力、などとしたり顔でいいますが、もともと芸能界などそのような勢力がパトロンについていたのは公然の秘密ですし、であれば故美空ひばりさんが1948年2月、神戸松竹劇場への出演に際して、神戸での興行に影響力を持っていた当時も今も日本最大の指定暴力団・三代目山口組組長の田岡一雄に挨拶に出向き、気に入られ、不適切な関係というよりむしろ暴力団側から芸能プロダクションを作り一体化した(戦後間もない当時は、警察の力が弱く、地回りへの挨拶は必要不可欠であったというエクスキューズがつきます)といった事象や、最近亡くなったジャニーズ事務所のジャニー喜多川さんと多くの所属男性タレントとの不適切な男色関係(被害)など、枚挙に遑(いとま)がありません。
あくまで人間社会の縮図をあしらった興行、というそのような泥の上に咲く仇花、といった世界においては、そういった反社会的勢力との、いわば適切な関係も含めて大衆はそれを理解し愛でたわけですし、一方そういったことが嫌いな人々はそのような「芸能」には関わらず生きていくことができましたし、いい意味でバランスが取れていたわけです。
しかしながら、いつしか芸能プロダクションも巨大化し、株主という自分の「スポンサー」のために収益最大化のため、社会的貢献をしているふりをして振舞わなければならない、自分の色を少しでも汚すスキャンダルを起こした構成員は、例えそのメンバーが、会社でいうなら重役「執行役員クラス」の宮迫さんであっても、世間に黙ったままやり過ごすことが不可能でもう使い勝手がないと諦めた時点で契約解除で捨てざるを得ない、という状況になってしまったということなのでしょう。
吉本興業にとって誤算だったかもしれないのは、もう少し黙ってやり過ごせば再起して使い道(=吉本興業とその株主にとって収益や宣伝になるという冷たい意味)になるかと思っていた、「上席部長」クラスの田村亮までも、「アンコントローラブル」になってしまい、宮迫さんと一緒に勝手に自前の会見を設定して喋ってしまう、というところだったかもしれません。
まさに、「使い捨てかよ」と言いたくなるような事案でしょう。
これまで、当該芸人がどれだけ血と汗と涙を流し、組織に貢献してきたというのでしょうか。
ギャラ300円とかいう、立派なブラック企業認定の契約条件から這い上がり、裏方スタッフもようやく食わせて行けるレベルになった、そのような日々の振る舞いの中で暴露され、マスコミのほどよいコンテンツと化して、消費され尽くせば使い捨てにされてしまいます。
これでは、どんな組織に所属するどんなレベルの職員や構成員も、その組織のことを考え忖度し自身の保身に走れば、ほとんどのプライベートの活動はできなくなります。
何もしない方がいい、という最悪の世界の到来です。
もちろん、会社のためになるということであれば、会社に話をして、あくまで会社の活動や営業として、自らが会社構成員として参画する、ということになり、これは「表営業」と言われるのでしょうか。
しかし、ライドシェアとか言ってもどう見ても白タク行為にしか(筆者のような単純な者には)見えないUBERの個人配車サービスなどがイノベーティブとか言われているのを見るにつけ、個人としての活動範囲に金銭的なやり取りがたとえ全くなくても、下手に会社の信用を傷つける行為として、全てのプライベートな行動が監視下に置かれるというならば、こんな窮屈なことはありません。
イノベーティブ、と反社会的勢力との付き合いやコンプライアンス違反の「分水嶺」とはどこなのでしょうか。
誰か一覧表でも配布してもらいたいものです。
もっと、当事者である会社や組織側と、働く契約者や社員側として、きっちり業務委託契約書をとりかわすとか、雇用契約書を書面で読み合わせるとか、その中にきちんと会社の信用を傷つける行為類型を限定列挙するとか、副業についてのルールや取り決めを行っておくとか、いくらでもやりようがあると思うのですが、そういった一定のルールが外に出て揚げ足を取られるのが嫌だという企業組織側の論理の壁は非常に高く、なかなかそのように時代が進化しないのがもどかしいところです。
重要なことは口伝でしか伝わらず、といった世の中をイングランドの市民たちが変え、世界で最初の憲法であるマグナカルタが初めて「文書化」されました。
それから何百年も経過して、日本の元号も和書由来の令和になったというのに、まだまだ文書化してそれが晒されるのが怖い、書いたことも守る自信が会社側にまだまだない、といった状況がこの21世紀の世界にまだ続くとは、逆に言えばまだまだ人類は賢くなれそうだと逆に勇気付けられた気がします。
最後に、所属芸人(契約社員)が謝罪の会見を開かせてくれ、自分たちの口から全てを説明させて欲しい、詐欺師グループの被害に遭われた人たちに謝罪の気持ちを伝えさせてくれと訴えたことに対して、他の社員や弁護士を全て外に出してから、その契約社員4人と社長1人の5人だけで、「お前らテープ回してないだろうな?」と念押しした上で、「会見やってもいいけどそしたらお前ら全員クビな」と言い放つその社長の物言いが、今回の事案における最右翼の「ブラック」対応だと思いましたいち視聴ユーザーからの意見は以上です。
(2019年7月20日 土曜日)
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