一隅を照らす

追悼 福地茂雄氏

たとえ小さな歯車ではあっても、
組織全体にとっては紛れもなく
重要な歯車なのです。
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福地茂雄(アサヒビール社友)
○月刊『致知』2023年6月号
連載「巻頭の言葉」より
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●アサヒビール社長やNHK会長を歴任した
福地茂雄氏が亡くなられました。
福地氏は『致知』の愛読者でもあり、
昨年12月号まで「巻頭の言葉」を
執筆いただいていました。
本日は氏の遺徳を偲び、
「巻頭の言葉」(2023年6月号)の
一部を掲載いたします。

●人はそれぞれが社会という
一つの組織の中で生きています。
そして組織では、大小様々な歯車が
相互に関わり合って動いています。
たとえ小さくても、
その歯車がなければ組織は動きません。
逆に大きな歯車は、
それを動かすのにそれなりの力(能力)がいります。
要は、大きな歯車だけが重要ということではなく、
皆重要だということです。

(中略)

以前、小さな組織に転勤になった人が、
「自分は左遷になった……」と
嘆いているのを聞いたことがあります。
しかし、いまの企業に不要な歯車を持つ余裕などなく、
左遷の組織など存在しません。
すべて必要な歯車であることを自覚し、
赴任先で持てる力を最大限に発揮すべきです。

私自身、入社時から十年近くは
小さな小さな歯車でした。
私のような小さな歯車など、
あってもなくても企業という大きな歯車の動きに
全く影響しないのではないか、
と寂しく思ったこともありました。

しかし、私のような小さな歯車が
皆同じ思いを抱いてしまえば、
企業体という大きな歯車は動きをなくしてしまう。
そう思い直し、
たとえ小さな歯車であっても
自分に与えられた機能を精いっぱい果たすべく、
決意を新たに目の前の仕事に
一所懸命打ち込んでいったのです。