日本たばこが「マイルドセブン」ブランドを「メビウス」に変更した理由
おはようございます。
2013年9月の記事です。
もう数年前になりますが、かつて民営化された日本最大の(といっても1社しかありませんが)煙草専売業者(今は多角化して医薬品や缶コーヒーなども作っている国際企業です)が、35年間続いた煙草の主力商品ブランド「マイルドセブン」を「メビウス」に変更すると突然発表しました。
会社発表記事を読んだ方には、突然でわからないことだらけだったかと思います。
普通、市場や消費者にこれだけ浸透した名称を、はい明日から違う名前、と変えるなぞ経営センスを疑われる所業だと思われても仕方ない話です。
会社の公式回答はこうです。社長のコメントを公式回答と見做して記載しますが、「既存市場シェアの拡大はもちろんのこと、地理的拡大が戦略の骨子となる」ということが名称変更の理由とのことなのです。
そのための施策として、新ブランド名称の導入、パッケージデザインの刷新、ラインナップの拡張を模索する、とのことです。
さて上記の情報を如何に咀嚼しても、日本最大の旧煙草専売公社が、なぜこのような「ひとりよがり」の施策を打ち出すのか、プロの投資家でも一見わからないと思います。
しかしヒントは社長のコメントに隠されています。
きちんと背景を含めて読める「情報把握力と構成力」が必要なのです。
ここが通り一遍の投資家と、真の時代を読める投資家の違いです。
タバコのマイルドというネーミングが問題とされた
答えを言いましょう。
アメリカを中心とする欧米諸国の煙草規制法により、消費者に煙草の害を誤認させる恐れのある「マイルド」という単語が使いにくくなった、この世界的潮流により、コンビニチェーンでアルバイトの高校生がたばこを販売できている「喫煙後進国」である日本における煙草専売業者も、ついに動かざるを得なかった、ということなのです。
社長のコメントを良く読んでみますと、「地理的拡大」とは海外市場で売りやすい(売ることを許してもらえる)煙草のブランド名、ということに他なりません。
経営者は公式には言えない部分をこのようなニュアンスで「察して」もらいたいとシグナルを発します。
しかし自分の世界からしかモノを見ない投資家は、この会社経営陣の苦悩がわからず、また煙草事業という世界的に締め付けられている事業の本質(と将来性)を見誤り、単に変な経営判断をしたとしか思わないわけです。
さてこの情報の取り入れ方は必ず投資行動に反映します。
当該会社の上場株式を持っているならばホールドすべきか、今売るべきか、明確な情報に基づいた判断をすることができます。
正しい情報を嗅ぎとる情報力がなければ、情報は単なる洪水として通り過ぎるだけです。
多く情報が集まる投資家ほど、この罠にはまります。
本当の情報は行間や言外から嗅ぎ取る、察するものなのです。
そういった肝となる情報は、公開情報そのものからは決して得られません。
自らの嗅覚と弛まぬ鍛錬で身に付けるべきものなのです。
鈍感力にはマイルドに定評のある筆者からは以上です。
(平成25年9月10日)


