(2019/07/24)「れいわ新選組」 ほか1政治団体が2019年7月参議院議員選挙の結果を受けてめでたく「政党」に格上げされたという話です
おはようございます。
2019年7月の参議院議員選挙は、各候補者の当選(落選)が決まった後が面白いことになっているという記事です。
普通、選挙というのは、投開票の結果で一番盛り上がり、その後の動向については、一部の選挙政治マニアしか追っかけないものなのですが、今回に限っては、新しい2つの政治団体が、選挙区および比例区における2%以上得票というハードルをクリアし、「政党」に格上げとなり、また旧社会党の流れを組む労働政党である社民党が、首の皮一枚でこちらも「政党」に踏みとどまった、という意味で非常にエポックメイキングなものでありました。
これまでは、政党要件といいますと、「国会議員5名以上」で年末に換算されるものですから、年末になりますと、なぜか野党側で政党のシャッフルというか「お仲間同士の」ミニ再編が起こるという変な風物詩となっておりましたが、「れいわ新選組」および「NHKから国民を守る党」という強烈な印象を残す2つの団体(あと社民党も)が、今後少なくとも(所属参議院議員が存在する6年間は)政党として存在、存続する見込みになりました。
日本の法は、公職選挙法・政治資金規正法・政党助成法・政党法人格付与法の各法で、政治団体の中から一定の要件を満たすものを「政党」と呼び各種の保護の対象としています。
要件は微妙に異なりますが、強引にまとめますと、
「政治団体のうち、所属する国会議員(衆議院議員又は参議院議員)を5人以上有するものであるか、近い国政選挙で全国を通して2%以上の得票(選挙区・比例代表区いずれか)を得たもの」
が「政党」となります。
そして、こうした法律上の「政党」になりますと、以下のメリットが出てきます。
1 政党交付金がもらえる
交付金は年約320億円(国民一人当たり年間250円)が各政党の議員数や国政選挙の得票率に応じて配られます。
所属議員1人で年間約5,000万円の交付を受けることができます。
れいわは2名、N国は1名の国会議員が存在するので、これだけの政治活動の原資が手に入るというわけです。
実は、生まれた瞬間から死ぬ直前まで、我々国民は、老いも若きも女も男も、みな等しく、年間250円の政党交付金の原資を支払っているのです。
これは、「コーヒー一杯」程度のお金ですが、チリと積もれば山となる、の典型でありまして、こうしたお金の行き先を決めるという意味でも、国会議員を決める国政選挙というものは大切だということがわかると思います。
2 選挙(事前)活動の幅が広がる(衆院選の重複立候補が可能となる)
公職選挙法にも、政党助成法に似た政党要件があります。
そして、この政党要件を満たすと、少なくとも次に行われる衆議院議員選挙においては、政党としての選挙カーやビラ、はがきを活用することができます。
また、小選挙区の候補者が政見放送に出られるようにもなり、さらにこれが一番大きいですが、衆院選の比例区への重複立候補が可能となるという大きなメリットがあります。
つまり、れいわ新選組の党首である、今回の参議院議員選挙では特定枠1位、2位の候補に先を譲って落選した山本太郎氏は、次回の(いつ行われるかは首相に専属する解散権の行使如何によりますが)衆議院議員選挙においては、おそらく東京都のどこかの選挙区と、比例東京ブロックの重複立候補に打って出てくるでしょう。
現職の、東京都選挙区のどの国会議員にとっても、悪夢に等しい「完全無役」の候補者の誕生なのです。
これから、次回の衆院選に向けて当然、山本太郎党首は選挙区での当選を目指し、さらに比例区での政党票も積み上げ、独自に擁立する「尖った」候補を当選させようと活動するでしょう。
3 国会および民間テレビの党首討論に参加できる(メディアの露出が劇的に増す)
もはや政党と認定されておりますので、放送法に定める公益性からも「諸派」などというひとくくりのカテゴリではなく、テレビの討論番組などでもメディアの露出も増えることは間違いありません。
さらに、国会の場でも、党首討論の機会があり、これは国会議員ではない例えば日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)も政党の代表として参加可能であることから、同じく政党であるれいわ新選組の山本太郎代表は、堂々と公党(政党)の代表として国会で発言をする機会があるということなのです。
(あえて、一郎と太郎で対比させてみました)
これは、もはや参議院議員に落選した、ことなど関係ないと思えるくらいの「選択肢」「フリーハンド」を得たとも言えるのではないでしょうか。
もちろん今回の2019年参議院議員選挙で、「諸派」のひとつとしてのれいわ新選組で、300万票を、山本太郎個人と政党名で獲得して、自身も国会に戻るというのが一番のシナリオだったと考えられますが、自身がむしろわざと野に下ったとしても、他の落選候補と共に、草の根でもう一度票を掘り起こしていけば、次に向かっての可能性は大いに広がったというわけです。
これが、選挙が終わった後が面白い、と筆者が感じる理由です。
また、れいわ新選組から特定枠で当選した1位船後靖彦氏と、2位の木村英子氏が、参議院という国権の最高機関の場で、どのように振る舞い、そして国民の支持を得るのか(得ないのか)ここも非常に興味があります。
国会議員政策担当秘書の資格を持っている筆者ですので、当然衆議院も参議院も入って見学したことがございますし、予算委員会の審議を袖の下から見るような機会もございました。
しかしながら、どうもこの場はお高くとまっているだけの権威主義に堕したところもあるなと正直考えておりましたので、この常時介助が必要なこのお二方(と介助者)がこれからこの場でどのように振る舞うのか、ここに日本の国民の民度というやつが試されていると感じ大変注目しているのです。
そして国会外であっても、テレビ局の取材などに山本氏がれいわ新選組の代表として、また2名の国会議員が所属する政党の代表者としてコメントすれば、各局は放送せざるを得ません。
また、先に述べましたように山本氏は維新の松井一郎代表のように非議員であっても公党の党首(代表)でありますので国会の党首討論にも堂々と参加できます。
そして国会議員でなくても、他の野党党首どころか、自民党の(閣僚や党四役、派閥の長といった)有力政治家よりよっぽど目立つ存在になりうるのです。
ちなみに、今回の参議院議員選挙においては、れいわ新選組とNHKから国民を守る党(N国)が、法律上の政党要件を満たし、一方社民党も政党要件を維持しました。
さて、れいわの山本太郎氏に戻ります。
間違いなく、彼にとって今回の参議院議員選挙は、あくまで前哨戦にしか過ぎず、二院制の裏議院である参議院議院選挙は落選覚悟で臨み、そして本当の勝負は、 そして自身が国会議員として入ることを本当に見据えているのは、(首相を出せる)衆議院にあると思われます。
本人も述べています。
「ただ今回私が旗揚げした理由は、政権を狙いに行くということをいっておりますので。当然、今回の選挙で私が議席を失ったのなら、次の衆議院になると思います」
政治を本気で変えるなら、自分1人が1議席参議院でとっても意味はない、といった話を、演説でも繰り返し語りました。
これは、今回の参議院選挙のことしか、自分が当選することしか考えていない他の候補者とは決定的に違うところだと思われます。
単に当選したいのであれば、自身を特定枠にすれば良いし、そもそも地盤の東京都選挙区を捨てる必要もなかったわけです。
しかし、彼は自身の1議席を敢えてリスクに晒し、全国比例区での300万票というハードルを思い切りあげて、全国行脚の遊説に回りました。
この戦略眼、大局観をもって、今回の参議院議員選挙にのぞんだ野党や無所属の政治家はほかにいないでしょう。
結果、自身は「落選」したものの、参議院選挙として2議席を獲得し、次回は堂々と政党要件を満たした公党として活動できます。
しかも、自身は落選候補でありますから、次の選挙のために全くのフリーハンドで動けるというわけです。
本気で政治を変えるというのはこういうことであるかと、しかも選挙活動資金はクラウドファンディングというかカンパで集まるし、候補者選定も余計な組織の中二階もなく、不透明な手続きで白けることもなさそうです。
最高のブースター会員制度の誕生みたいなものです。
それこそ、「コーヒー一杯」程度のカンパでも寄付でも、直接国の政治に繋がっているという実感があるというのは、いくら景気対策を打って「トリクルダウン」で上から景気回復が染み渡ると7年弱言い続けてもちっともそのようになっていない(ように思える)現政権からすればかなりの脅威に映ることかもしれません。
加えて、選挙において是非とも欲しい「票」も、特定の組織ではなく、きちんとやりたいことや理念を訴えれば、それに応えた直接市民や庶民がれいわ新選組という公党を直接支持することで得られることはこの2019年7月の参議院議員選挙が証明しました。
これは、企業活動には組織が必要、と固く信ずる旧弊の経営者や大手投資家にも大いに聞かせてあげたい話だと思いまして、特に強調しておきたいと思います。
もはや、政治は国会の中で行われるものではなくなってきているのかもしれません。
大衆の一般意思が、直接「代議士」を通って国会で粛々と「決まる」、そんな世の中の夜明けを我々は見ているのかもしれません。
ここで重要なのは、国会議員とかいう「代議士」ではなく、大衆の一般意思を具現化することができる、強力なデマゴーグ、扇動家、活動家、私心なき政治家、要するに個人としての大物であり、その立ち位置にはさまざまな類型があろうということです。
それでは、国会議員の政策担当秘書にはいつでも就任できる資格を持っております政治マニアの筆者からのレポートは以上です。
(2019年7月24日 水曜日)
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