(2019/07/23)2019年7月の夏休みにお送りするコーチングを主体とした個別指導塾の最先端について
おはようございます。
2019年7月の夏休みにお送りする個別指導塾の最先端を俯瞰するという配信記事です。
明治以来(江戸時代の寺子屋時代以前?)から学習や講義の主流であった板書を背にした講師や教師のスクール形式の授業を行う塾形式より、日本全国の塾は、個別指導に急速にシフトしつつあるようです。
上場企業の中でもリソー教育(4714)が運営する個別指導塾「トーマス」はその特徴的な振り切ったサービスシステムで人気を集めています。
まず、驚くのはその会費の高さです。
なんと、年間120万円が基本という授業料ですが、生徒は順調に増えています。
この塾は、講師1名で生徒1名を教えるという、完全個別指導を掲げています。
もうこうなると、家庭教師と何が変わるのかという点がありますが、リソー教育が抱える個別指導のノウハウや豊富な受験情報がプラットフォームとして「講師側」が使えるのが安心感の秘訣のようです。
個別指導を掲げる他の塾では、講師1名で3名程度の受講生を見るのが普通であることを考えると、講師の人件費に加えて本部運営コストや営業広報コストを加味した受講料が、月間10万円に上るのも理解できます。
それでも、受講生が増えるというのは、やはり、「教育」「受験」にかける費用に糸目をつけてはいられないという親含めた保護者の焦りがあるように感じてなりません。
このように、旺盛な需要はあるのですが、この分野や業界でも、やはり立ちはだかるのは人材不足、すなわち講師の不足です。
生徒は増えても、学生バイトを主とする講師を確保するのが容易ではないのです。
昔は、筆者のように、ひたすらお金稼ぎに塾講師や家庭教師(や配送や百貨店のブース搬入)のバイトを入れまくっていた不良学生も多かったのでしょうが、最近の大学生は実は勉学や就職活動を優先させ、週2コマ(1コマ90分と換算)程度しかバイトのシフトに入ってくれないというのです。
こうすると、なんと生徒1名につき、(科目受け持ち半分ずつの)講師2名という体制にする場合も出てくることになり、マッチングはさらに困難になってきます。
それから、これだけ高額の受講料を支払いながら学生のバイトだけだと、講師の質の問題として敬遠されてしまうことになることから、プレミアムな会員や生徒には、直雇用の塾の正規講師が個別指導に回ることも多くあるということです。
こうなると、完全家庭教師の王侯貴族並みの待遇ということになりますが、それでも、この分野は、「勉強へのモチベーション」や「勉強のやり方」「ペースメーカー」としての需要が高まる一方のようです。
そして、塾側も、質の担保された講師の育成として、教育計画の報告会や講師同士が学び合う場を設置し、企業主催のマネジメントの講習や就活支援による「講師時間の確保」に躍起になっています。
大学生も含めて、お前の代わりなどいくらでも代わりはいるんだなどと言われ続けた筆者のような世代にとっては、信じられない時代になりました。
集団型指導塾もこうした波を受けて、変化の真っ只中にありますが、IT(情報技術)を駆使した指導の展開がブレイクスルーになるものと思われます。
例えば、学研ホールディングス(9470)は、傘下の一部の塾でデジタル教材を導入し、授業を効率化しています。
生徒は、板書と並行してタブレットやパソコンで案内に沿って各自で学習を進め、講師は生徒のコーチに徹するという形です。
教室に生徒は複数いても、学習はそれぞれが進める、いわば日本発で世界に広まった「公文式」の形式です。
ここから進んで、一定の単元が終了したところで、確認テストを受けてもらい、それが合格となると次の単元に進むという、ある意味成果約束型のサービスが生徒保護者双方に好評だということです。
塾に頼らない、究極の自学型「自宅塾」の形式もあります。
筆者が(壱岐島などの)離島などで十分な塾の授業が受けられない生徒向けに推薦しているのが、「自宅で能率的に受験勉強もできる」リクルートホールディングス(6098)傘下のリクルートマーケティングパートナーズ(東京・品川)の映像授業配信サービス「スタディサプリ」です。
スタディサプリはスマートフォンやタブレット、PCといったITデバイスで人気講師の授業を配信しています。
月額980円(税抜き)で、小学4年生から大学受験向けまで4万本以上の動画が「見放題」となっています。
しかも、動画は2倍速で聞けるので、時間の無駄もありません。
さらに「字幕」までついてくれれば言うことなしなのですが、それは将来の展開に期待したいと思います。
このような、手軽で割安な授業料で人気を集め、2018年度の有料会員は84万人と前年度比3割強増加し、全国約1000の高校とも契約を交わしているといいます。
もはや、塾は教えるところではなく、これからの教育機関は、教える力より生徒をコーチングして適切に力を発揮するように「監督する」力の方がはるかに重要になる、すなわち、ティーチングからコーチングへの流れは確実にきているのではないかということでまとめたいと思います。
スクール形式の塾が近くにない田舎で育ったので、教材といえばZ会の通信講座のみ、そして大学では家庭教師で生活費の足しにしていたそんなキャリアの筆者からすると、今の学生は随分大切にされていていいなと思う反面、これだけ上げ膳据え膳で環境を整備してもらわないとやる気が出ないようでは、世界中のハングリーな青年たちとの国際競争に勝てるのかと若干心配にもなります、そんな昭和生まれの筆者からの率直な感想は以上です。
(2019年7月23日 月曜日)
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