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モスク |
おはようございます。
2014年10月の国際情勢に関する配信記事です。
ISIS(いわゆるイスラム国)ですが、どうして武装した暴力的過激派組織がなぜ一定の支持を得ているのでしょうか。
イスラム教を奉じる人々をムスリムと言いますが、その多数であるスンナ派は、イスラム教の開祖である預言者ムハンマドの死後、預言者ムハンマドの無謬性(誤りをしないこと)は誰にも継承されることなく、したがって次の預言者や無謬人間は存在せず、単に預言者の代理人たる「カリフ」が、預言者の慣行「スンナ」にしたがって共同体をまとめるのを大筋で認めます。
いわば最も教団を維持発展させていくのに便利で、思想的に純化されたものではありませんが多数をまとめるのに都合の良い柔軟な思想が、今のイスラム教で9割を占めるスンナ派になったというわけです。
そういうわけでカリフ位というものは、血統に拘らず教団内で実力を持つものが継承していくのも普通のこととみなされました。
その中で、ムハンマドの血縁者すら「排除」したところから、血縁や預言者の無謬性の継承を血統に求めるシーア派との対立を招いていく事にもなりますが、とにかくカリフ制というのはイスラム教多数派たるスンナ派にとっては大切な心の拠り所だったわけです。
しかしながら、オスマン帝国の最後のスルタンが追放された1924年に同時にカリフ制も廃止されてしまい、それよりムスリムの多数派全体に支配権をおよぼすカリフは出ていないのです。
つまり、現代は14億人とも言われる世界最大のイスラム多数派宗教共同体をまとめる正統な支配者が誰もいないという大変不安定な状態なのです。
この点、今も連綿と教皇位が続いているキリスト教ローマ・カトリック教会(信徒数11億人と言われる)とは違っているわけで、近年盛り上がりを見せているイスラム復興運動はこうした状況抜きには説明できないのです。
そして、巧妙かつ大胆なことにISISの最高指導者であるアブ・バクル・バグダディは、新しいカリフを自称し、世界中のスンナ派イスラム教徒に忠誠を求めているのです。
残虐なテロ集団という面がある一方、支配下に置かれたイラク北西部やシリアのスンナ派住民や、カリフ制再興を望んでいた国内外のイスラム教徒からは、隠れた一定の支持を得ているのです。
組織や軍制も整備され、経済活動も活発と伝わってきます。
堂々とカリフを僭称しているところが、エジプトやサウジアラビアの同じくスンナ派の宗教指導者にとっても頭痛の種でもあるのです。
彼らとしては同列に論じてほしくないと思っているでしょうが、そこがイスラム国の狙いでもあるのです。
このように、世界は残酷だけれども、それゆえ示唆に富んでいると思う筆者からは以上です。
(平成26年10月17日 金曜日)