わずか37文字の開会宣言(天皇陛下のお言葉)

天皇陛下のお言葉

近代オリンピック開会宣言は、仏語と英語でかかれた五輪憲章の原文に明記されています。

日本オリンピック委員会(JOC)によって和訳された宣言文を、開催国の元首が読み上げることになっています。

2020東京五輪の開会式では、次のとおり天皇陛下が、宣言なさいました。

「私は、ここに、第32回近代オリンピアードを記念する、東京大会の開会を宣言します」

完璧な宣言。

コロナ禍に配慮した天皇陛下が、規定文の「祝う」を「記念」に変えたことがまず素晴らしいこと。

続いて、天皇陛下は、重要な事務方の「誤訳」を訂正し、オリンピアードを祝う東京大会、という、正しい翻訳にさらりと修正しておられたのです。

JOCが公表する「五輪憲章2020年版・英和対訳」を見てみますと、

「わたしは、第(オリンピアードの番号) 回近代オリンピアードを祝い、(開催地名)オリンピック競技大会の開会を宣言します」

となっていますが、国家元首が祝うのではなく、祝うが修飾するのは開催地名のオリンピック大会そのものであり、国家元首はその総体としてのオリンピック競技大会の開会を宣言する、ただ一点そのことを述べる極めてシンプルイズベストな宣言なのです。

それを、国家元首が祝って、開催を宣言する二文に誤訳しちゃっている事務方官僚の翻訳センスというか、教養と知性の不足について、天皇陛下は誰も責めずにさらっと、記念する東京大会、と一つの言葉にされて誤訳を訂正し、しかも祝うを記念するに変更し、今の世情に最大限配慮された、それでいて堂々たる宣言を世界に発出されました。

一国民としまして、まさに尊敬しかありません。

修飾、被修飾、主語述語の関係を混乱させた事務方の間違いをさらっと修正なさいました、教養と知性のなせるわざです。

そして極めて優しい。

感服いたしました。

以上