プロ意識とは整理整頓から始まるということを学んだサッカーのジーコ選手の言葉について
おはようございます。
2018年8月の日本のプロサッカーリーグに関する配信記事です。
J1のチームである、ヴィッセル神戸にスペインリーグのリーガ・エスパニョーラのビッククラブである前バルセロナFCの世界的名手、魔法使いとも呼ばれるアンドレス・イニエスタ選手、同じくサガン鳥栖には英国プレミアリーグで神の子とよばれたフェルナンド・トーレス選手が加入するなど、日本のサッカー界も、ついに欧州の超一流選手が移籍するようになってきたというのは大変喜ばしい限りです。
しかしながら、日本のプロサッカーリーグが生まれたばかりに、日本にプロ意識というものを注入した、ブラジルの英雄ジーコ選手のことを思い出さずにはいられません。
ジーコは、ブラジル代表の10番として君臨したまさにかの国の英雄でした。
そのジーコが、一旦引退してブラジルにスポーツ大臣に就任、その後日本のJリーグの求めに応じて引退を撤回して日本の地を踏んだのは、Jリーグ創成期の住友金属工業蹴球団(現在の鹿島アントラーズ)でした。
さて、この当時の田舎町の弱小プロチームは、ジーコ選手にとって弱小の名前にふさわしい振る舞いだったようです。
アマチュア意識が抜けず、たとえば練習後の夕食のあとに、夜な夜な寮を抜け出してスナック菓子などのジャンクフードやビールを買い込んでくる選手があとを絶たなかったそうです。
ジーコ選手は、こうした振る舞いを止めてプロサッカー選手としての意識を叩き込むため、なんと毎晩選手寮の出入りを見張って、彼らが買って来た菓子やビールを没収、プロ選手の体づくりに必要な食材ではないと当時、選手寮の玄関脇で買っていたヒメという名の雌犬にそれらを次々と食べさせ、丸々と太ってしまったヒメを見せて言い放ったそうです。
「お前らみたいなプロ意識のない選手のせいで、可愛かったヒメがこんな太った姿になってしまった」
と。
ジーコ選手は、選手のスパイクシューズやボール、そしてロッカールームの整理や使い方についても大いに幻滅し、嘆息します。
ジーコは滔々と述懐したそうです。
世界的名手である、「白いペレ」とまで呼ばれたブラジルの英雄が、日本の鹿島の片田舎で、世界的には無名の日本人の若い選手に向かって切々と説くのです。
「8歳の頃からサッカーに親しんできた私が、最初のスパイクを手にしたのは、13歳のときでした。自分のスパイクを持つなんていうのは夢でした。だから、スパイクを貰ったときは、本当に嬉しかった。真新しいスパイクを履いてみると、自分に不可能なプレーはないように思われました。私にとってスパイクは、魔法の靴だったのです。」
「しかし、私がサッカーの指導をするために辿り着いた異国ニッポンのロッカールームには、泥の付いたままのスパイクが、無造作に転がっているではありませんか。私は非常に悲しくなりました。そして、同時に怒りが込み上げてきたのです。」
「「来週までに、ここにあるスパイクを、みな磨いておきなさい」私はそう言った後、宝物のように大切に履きつづけてきた古いスパイクをカバンから取り出して、靴クリームで丁寧に磨き始めました。」
驚いたのは、周りの選手たちです。
ここまでされてしまっては、日本人も発奮しなければなりません。
お客さんとして物見遊山に来ただけではないかと思っていたブラジルの英雄は、一番サッカーをやりたがっている、そういうジーコ選手の本気に気づかされた住友金属工業蹴球団は変わっていきます。
じきに、選手たちも磨き抜かれたスパイクできっちりボックスに収納し、ロッカールームは輝くように見えるようんなりました。
選手寮のジャンクフードは消えました。
それだけの態度をもって、そして日本のチームにプロ意識を植えつけたジーコ選手は、1993年のJリーグの開催年、ファーストステージ優勝という成果を鹿島アントラーズにもたらすのです。
サッカーで名声を得ることはとても光栄です。
しかし、ジーコ選手は今なお、スパイクを履かせてもらったその日の感動と感謝の気持ちを忘れず、サッカーの心と思い、綺麗に磨いて整えておくのです。
このような先人たちの足跡を見るにつけ、プロ意識とはきちんと道具を整理する、心を整える、ということから始まるのだと思わずにはいられません。
そして、失敗に対する態度についても、ジーコ選手は非常に含蓄深い言葉を残しています。
「気にすることはありません。私はワールドカップでPKをはずしたことがあります」
物凄く強い言葉です。
Jリーグ発足時は既に40歳を迎えていても最前線で身体を張った、開幕戦でハットトリックを決めたジーコ選手がいたからこそ、今に続く日本のJリーグの隆盛と表紙の写真のようなロッカールームを綺麗に使う日本代表の振る舞いにつながったと断言できます。
綺麗に整えて、準備する。
感謝の心を忘れない。
大抵の失敗は、ワールドカップでPKを外すより気になるものではない。
夜な夜な誘惑に駆られますが、たまにはスナック菓子を自粛しようと思いました同じく現在40過ぎの筆者からの振り返りは以上です。
(平成30年8月4日 土曜日)